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携帯用の独和・和独辞典

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 ボクはドイツに渡るまでドイツ語を習ったことがなかった。大学でドイツ語の授業をしている先生に聞くと、彼はボクに一つの辞書を推薦してくれた。2色刷りで大きな書体のその辞書は確かに分かりやすそうだったが、内容量と重量にはやや不満を感じた。海外へ行くのだからできるだけコンパクトで軽量、しかも重要な単語をもらさず収録しているものがいい。しかしそんな都合のよいものを、Arbeit の意味さえ知らない人間が探せるはずなどなかった。

 結果として、大きな辞書を5冊も持ってドイツに渡った。内容の良し悪しなんて使ってみなくちゃ分からない。古本屋で安く買って持っていき、使いにくいと思ったならドイツで捨てればイイさ。最初はそんなつもりだった。

 しかしどれを使ってみてもしっくりこない。なにより授業中は分からない単語だらけで、いくら辞書をめくっても先生の話について行けるはずなどなかった。そして悟ったのは 「大きな辞書は不向きである」 ということ。自分の部屋で宿題をやっているときには大きくてもいい。正式な文書を書くときには断然、大きな辞書がいい。しかしスグに調べなければならない状況では、やはり小型辞書に限る。

 さて小型と言ってもいろいろある。ボクが購入した小型の独和辞典の中で最も使い勝手が良かったのは、デイリーコンサイス独和・和独辞典 (三省堂)

 実はボクが最初に買ったのは、「新コンサイス独和辞典」 という、「和独」 のついていないタイプのもので、これに併せてもう一冊 「新コンサイス和独辞典」も購入した。しかし実際に使ってみると非常に使いにくかった。小さい辞書なので単語の説明が少なく、例文が少ない。初歩のドイツ語学習者には不向きだと思った。

 後になって、独和と和独が一冊になったタイプのものがあることを知り、ボクは試しに本屋で立ち読みしてみた。いやぁ、ビックリしたね。すごく使いやすい。もちろん例文の量などは分冊版とあまり変わらないのだが、独和がついているために単語の用法確認が容易だ。分冊版と違って、通学時のバスの中でもこれ一冊で済むから非常に重宝している。



 同じような携帯型で、しかも独和と和独が合体した辞書に ポケットプログレッシブ独和・和独辞典 (小学館) がある。ボクの知る限り、デイリーコンサイスプログレッシブ の2冊がドイツ留学生の圧倒的人気を勝ち得ている。特に、この 「プログレッシブ独和・和独辞典」 を持っているのは、日本の大学のドイツ語学科やドイツ文学科出身の留学生達だ。

 なぜこんな傾向が生まれたかはよく分からない。ボクはことあるごとに 「何故 プログレッシブ を選んだの?」 と質問してきたが、彼らは大抵 「なんとなく」 とか、「みんなが持ってるから」 などと答える。よく分からないが、どうやら日本のドイツ語系学科では プログレッシブ が人気らしい。

 ボク自身も プログレッシブ を所有しているのだけど、ただ…、ボクとしては デイリーコンサイス の方が使いやすいように思う。単に好みの問題と言われればそうなのかもしれない。しかしボクが思うに、「どちらかと言うと コンサイス」 ではなく、「圧倒的にコンサイス」 の方が使いやすい。

 その理由は一つ。和独部分が プログレッシブ より充実しているためだ。携帯用辞書というのは、スペースの制約上どうしても例文や説明を省略しなければならない。よって初歩者より中級者以上を対象に販売されているように思うが、デイリーコンサイスの方は 和独部分が充実しているために、例文の少ない独和部分をうまく補完している。慣れれば恐らく プログレッシブ より使いやすい。事実ボク自身も、プログレッシブ はお蔵入り。ほとんど使っていない。



 独和・和独の合体型で、あの有名なジェムシリーズ、ジェム独和・和独辞典 も紹介しておこうか。ジェムシリーズの中でも 「ジェム英和・和英」 は超小型で単語厳選に評価が高く、欧米留学者やビジネスマンにはおなじみとなっている。しかし同じジェムでも ドイツ語版は…、あまり良くなかった。あくまで個人的な好みの問題であって一言で 「悪い!」 と切って捨てるつもりはないが、しかし正直言ってボクには使い物にならなかった。収録単語数が圧倒的に少なすぎるからだ。

 最初の頃は常にポケットに忍ばせ既にボロボロになってしまったが、ジェムはほとんど役に立たなかった。しかしそれはボクが初歩のドイツ語学習者だからであって、上級者には丁度いいのかも知れない。ただ確実に言えることは、「DSH向きではない」、そして「語学学校向きでもない」。

 もし ジェム独和・和独 のような超小型辞書が欲しければ、むしろドイツ製の独和・和独辞典 Langenscheidt Universal-Wörterbuch Japanischの方がいいだろう。これも1995年頃に出版された旧版ものは酷かった。日本語は異口同音が多いのに全てローマ字表記だったため、何が何なのかさっぱり分からなかった。しかし最近のもの、特に 2003年の改定版からは非常に良質になったと言えよう。

 ちなみにサイズはボクが計ってみたところ 105 x 75mm、480ページ、収録語数は 22,000語。ポケットに忍ばせておいても気にならないサイズで、しかも非常に安いのが嬉しい。これに加えて同社からは大判サイズの独和・和独辞典も出ているのだが、これはあまりよくないような気がする。大型の辞書なら日本製の方が使いやすいのではないだろうか。

 この他にもボクは7冊の携帯用辞書を購入したが、どれも似たり寄ったりで、取りたててオススメしたいとは思えない。



2005.12.06 kon.T
2006.06.11 改訂

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