関連書籍・雑誌紹介
日本で買う文法書

メニュー
携帯用の文法書
 初めてドイツに渡ったボクはというと、それまでにドイツ語など勉強したこともなかった。もちろんドイツでは入門クラスに入って、一から学ぶつもりではいた。しかし文法書くらいは日本語で書かれたものを持参していくべきだと思ったものの、ドイツ語を学んだことのないボクにとって、どんな文法書がわかりやすいのか、そして人気があるのか、そんなこと知るすべもなかった。

 ボクはまず古本屋を回ってみた。人気のある本なら同じ物が複数並んでいる可能性が高いと思ったからだ。街の古本屋を回ってみて気付いたのは、ドイツ語の学習に関する古本の少なさだった。ドイツ語は日本人にとってあまり人気がないらしい。おかげで古本屋に並ぶ数少ない参考書は軒並み捨て値で売られていた。ボクは取り敢えず4冊の文法書を購入した。選んだのはとにかく薄くて軽そうなもの。そもまったく知らない言語なのだから、どんなまとめ方が分かりやすいのかすら分からない。取り敢えず複数冊ドイツに持っていって、使いにくい本があればその場で捨てようと思っていた。

 結局その中でボクいが最も分かりやすいと思った本が メモ式ドイツ語早わかり。いや、実を言うとその後も多くの文法書を探して回ったが、日本語で書かれたドイツ語入門書としては非常に優れていると思う。まったくドイツ語を勉強したことがないボクにとって、重要な文法がコンパクトで明快に解説された本書は長くバイブル的な存在になった。しかしこれはあくまで入門書であり、細かな例外や高度な文法については触れられていない。この本が役に立つのは、入門から基礎クラス、中級クラスの初期くらいまでと言ったところだろうか。



 ドイツ語も中級になると、かなり細かな使い分けを学ぶことになる。中級あたりからボクが最も使った…、と言うかいまだに手放せない文法書がある。それが必携ドイツ文法総まとめ。最初にこの本を見たときは説明が少なすぎて分かりにくそうに見えたのだが、使い始めたらこの本の素晴らしさに驚いた。正直なところこの本の例文などは多少古く、「面白さ」 という点においては全く期待できない。ただまとめ方が簡潔にもかかわらず、例外事項に関しても非常に細かく触れられている。

 この本を開くとき、「この内容で何でこんなに薄いんだ!」 と常に驚かされる。薄いということは、とっさに調べなきゃならないときにも、短時間で必要な項目を見つけることができるから学習効率も上がる、軽いからいつもカバンに入れておいても苦にならない。そういう理由で、日本語で書かれた文法書としてはボクの超オススメ品である。他にも多くの文法解説書を購入、あるいは書店・図書館でチェックしたが、ここまで徹底的に細かな文法まで網羅した文法書は他には見つからない。もちろん 「文法大辞典」 のような巨大な書籍はあるのかもしれないが、そんなものドイツに持っていけるはずがない。本書はカバンに入れて持ち歩いても苦痛でないところが、また素晴らしい。



 さてこれに対して少し重量の重い、そしてちょっと毛色の違う文法書も紹介しておこう。マイスタードイツ語コース1[文法]マイスタードイツ語コース2[表現]マイスタードイツ語コース3[語法]という3分冊の書籍なのだが、最初手にした時ボクはその書き方の軽妙さに驚いた。文法書というと固いイメージがあるのだが、本書はどちらかと言うと 「面白さ」 を売りにしている。

 我々ドイツ語を学ぶ者は、いずれドイツ国内で買うドイツ語で書かれた文法書のお世話になる。しかしその説明が理解できないとき、我々はまた日本語で書かれた文法書を開いてみることになるだろう。ボクがこの本を見つけたのは正にそんな時だった。日本に帰って大きな書店を回ってはドイツ語の文法書を片っ端から開いてみたが、しかし驚いたことに、どの本もほぼ同じような説明が書かれていて目新しさがない。理解できない文法が劇的に分かるようになるためには、全く違った説明が必要なのだ。

 この 「マイスタードイツ語コース」 のシリーズはそんなボクを満足させた。正直言って3巻目の [語法] はそれほどイイとは思わなかったのだが、1巻目の [文法] は勉強に行き詰まったドイツ語学習者にとって良質の教材と言えるだろう。もちろん初歩者にとっても分かりやすいが、一通りの文法学習が終了した人にもオススメ。普通の文法書と違って 「読み物」 といった感じなので、図書館に持ち込んでひたすらページをめくって勉強するのではなく、むしろ電車やバスの中で暇つぶしにペラペラめくってみるのがいいだろう。本書はあくまで副教材として使って効果が高いと思う。

 本書の難点はと言うと…、重量が重いこと。飛行機でドイツに渡る際、この3冊を持っていきたいとは思わない。できればもう少し質の悪い紙で軽く作って欲しかった。そして値段が少々高い。2005年現在、税込みで1冊 3,150円、3冊買ったら1万円に迫ってしまう。この点は何とかして欲しい。



 次に、文法書ではないが文法を学ぶ上で非常に役に立った本を紹介したい。まず、携帯版 ドイツ語会話とっさのひとこと辞典は単なる会話集と思いきや、紹介している表現内容に度肝を抜いた。例えば第3章 (12) 「話し合う」 の章では、「ある意味では彼は正しい」、「あいにくそのようです」、「はい、私の知る限りでは」、「あなたの考えは根本的に間違っています」、「そうかもしれないし、そうではないかもしれない」、「遠慮のないところをお聞かせ下さい」 などが、肯定・否定・あいまい・意見を求める、などに分類されている。これらは語学学校でのディスカッションの中で非常に有効であるばかりか、表現能力に劣る日本人にとって、いろんな意味で余裕を与えてくれるだろう。

 また第2章 (11) 「心をこめて述べる」 では、「ご親切、なんともお礼のしようがありません」、「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」、「失礼をどうぞお許し下さい」、「あなたって素敵ね!」 など、辞書を探しても中々見つからない、しかし日常会話で本当に使いたい言葉が山盛りである。他にも第4章 「感情を表す一言」、第7章 「会話によくでることわざ・決まり文句」 も必読だし、誉め言葉だけでも23の例文がある。

 もちろん会話集だから生活のうえでの即戦力として役立つはずなのだが、ボクにとってはここで出てくる表現が文法学習上で非常に役に立った。文法を学んだだけで日常会話が簡単にできるわけではない。逆に日常会話ができるからといって、文法問題が解けるわけでもない。両者は確実に関連しているものの、その関連性を見ぬくには教科書や文法書、辞書だけでは圧倒的に不充分である。

 文法書で表現を学んでもうまく使いきれない表現が、本書には例として大量に紹介されているので、これは会話集というより、我々にはむしろ文法書を補うための例文集としての価値が高い。そしてなにより初版の発行が2003年だから表現が実に新しい。更に小型でポケットにも忍ばせておけるから、ちょっとでも時間があればスグに開いて学べる優れもの。難点は…、ちょっと高い。小さいのに1冊税込み3,150円。しかしこれは価値ある3000円である。



 さてさて、文法を一通り学び単語に自信があれば文章は確実に読めるのだろうか? もちろん読めるに違いない。いや、読めるに違いないと思ってボクは勉強してきた。ところがいざ DSH の問題を目の当たりにすると、いくつか意味を解せない文章が出てきてしまう。それがテストである以上、なんとしてでも自分なりに解釈して解答欄を埋めねばならないわけだが、自分の理解が本当に正しいのか否か、それを判断するのは難しい。

 そんな時考えてしまうのは、そもそも授業中だって本当にボクはちゃんと理解していたのだろうか、ということ。自分では意味を理解しているつもりでも、本当は全く誤解していて、それを自分勝手に都合のいいように解釈しては納得していただけじゃないのか。そんな自問自答から生じた不安。それを拭い去るためには、難解な例文とその日本語訳を手に入れて自分の訳と照らし合わせることでチェックするほかはない。
語句の相関関係7 (15ページ)
ところで、知ることだけが地上における人間の目的なのではない。学問は人間の精神の微妙きわまる諸力を目覚まし、かつ淘冶するとはいうものの、ただ知らんがためにのみ研究するものは、この世における自分の存在の意義を正しく果たしたと思えることはないであろう。人間に人間として恥ずかしくない存在意義を与えるものは、ただ行為のみである。
付加語-2 (173ページ)
ドイツへの旅行を企てる人で、いくらかドイツ語を話せる人ならば、旅行案内書以外にそれ以上の案内は必要がない。しかし、友人か知人からドイツの家庭にあてた紹介状は、ことにそれが名望家 (名望のある人) からいただいたものならば、役に立つことがあるかもしれない。

 そういう理由で探して、とうとう手に入れたのが 独文解釈の研究 という書籍だ。本書ではまず特に難解な文章、と言っても10行程度、ワード数にして30とか50、多くても80ワードに満たない非常に短い文章を例示し、最後に日本語としての翻訳例を示している。また例文の下には例文中のほとんどの単語の意味が示されているので、「単語が分からないから訳せない」 ということはまずあり得ない。この本はあくまで 「どのように文構造を把握して理解するか」 ということのみを問うている。また単語の解説の下には文中で使われている難しい文法について解説がなされ、そして最後に 「これをどう訳すか?」 という本題に入る。

 すべての例題と解答が見開き2ページに収まっているので、暇なときに一題ずつ解いていくことができる。ただしここで出てくる例題は本当に難しい。特に難解な文章ばかり集めているからだ…、と言っても、どれほど難解であるかはきっと想像できないだろう。そこで、本書で示されている日本語訳を少し引用してみよう。左の黄色の枠内に示したのがそれである。正直言って日本語としても難解なものも多いが、普段からこういう難解な言葉を翻訳する方法を多少なりとも身に付けておけば、DSH の長文読解は非常に楽になる。

 欠点と言うほどのものではないが、取り上げられている文章は実はすべてが DSH 向きではない。内容は多岐にわたり、文学作品から手紙、学術研究書、哲学、論文と豊富であるが、DSH 対策として必要な研究論文を取り上げたものはあまり多くはない。そこが我々には少し不満に感じる点である。しかしこれを単に長文読解問題として捕らえるのではなく、あくまで文法書として利用するならばその価値は高い。なにしろ、例文中の主要な文法はことごとく 「どう訳すか」 という観点から説明が加えられているため、文法応用問題集として有用である。


2005.12.06 kon.T
メニュー

Project DokuBoku!
Copyright (C)2003-04 kon.T & M.Fujii, All Rights Reserved.