ボクはよく自分で自身のことを貧乏だと言っているが、自分以外の人間に ここまで明瞭に貧乏人の指定を受けたのは初めてだった。ふと気付くと、ペーターはまだボクの方を指差して浮浪者を威嚇していた。階段の方を見ると、あまりの事態に驚いた3人の客が、ハンバーガーを乗せた盆を手に静止している。浮浪者は深く哀れむような眼差しをボクに向けた。ペーターは浮浪者の袖をつかみ階段の方へと歩き出した。1階に向かって下り始めた浮浪者の背にもう一度ペーターは、駄目押しの
「 He is very very poor!」 の言葉を浴びせた。恐らく1階中に聞こえたろうその言葉には、最初と違って更に very (とっても) が2回も追加されていた。呆気に取られているボクの方を振り返ったペーターは、満面の笑顔で親指を立ててウィンクした。仕方なくボクもそれに応えて、親指を大きく突き出しニッコリと笑った。