不正乗客のことをドイツ語では 「黒 (Schwarz)」 と 「運転手・乗客 (Farhrer)」 を意味する言葉の複合語、Schwarzfahrer という言葉で表現する。インターネット上に見られる不正アクセス者を、中国語で「黒客」と表現するのによく似ている。
どの記事だったか忘れたが、すでに何ヵ所かに書いたと思う。ボクはドイツでも日本でも頻繁に警官の職務質問を受け、税関ではボクだけが全ての荷物をチェックされ、電車やバスでコントロール(乗車券チェック)に会う頻度が極めて高い。何故だかは分からない。ボクはドイツでは不正乗車をしない。というより、こんな状況だからこそ、まずそんな行為はできないのだ。
ところで市内交通機関の、つまり Strssenbahn (以下、STR) やS・Uバーン、バスの車中に貼ってある不正乗車への警告文を、あなたは読んだことがあるだろうか。紙ではなくシール式になっていて、大抵は車内の上部、窓の上あたりに貼り付けられている。ボクの知る限りドイツには12種類あって、これは地域毎に分かれている。
当初ボクは交通機関の地方連合が個別に作っているものだと思っていたが、どうやら違うらしい。ちなみに地元で見かけるものには「Rote Karte für Schwarzfahrer (不正乗客にレッドカード)」とあり、巨大な「40」数字が罰則金として表示されている。
バス、STR、Uの中だけでなく、Sの中でも同じシールを見かけ、また他の地域では別の表示を見かけるという事は、交通機関連合体毎に種類が違うと考えてまず間違いない。たとえば先ほどの「レッドカード」ではなく、地域によっては
「Schwarze Karte für Schwarzfahrer (不正乗客にブラックカード)」
というのもある。
言ってる事は分かるのだが、この色の違いは始めて見ると結構笑える。というのもシールのサイズはもちろん、注意書きの部分を比較すると、細かな表現まで全く同じなのだ。つまり同じ会社が製造しているのか、あるいはどちらかが他のを真似して作られたことになる。
例えばこのレッドとブラックに関して考えてみよう。もともと2種類あって、どちらも平等に使われているのであれば、これはあくまで「表現のバラエティ」と考えることができるだろう。しかし地域毎に完全に分かれるということは、それぞれの地方連合が明らかに1種類しか保有していないことを意味する。
このシールの製造所が同一の場合、購入した連合体はどういう意図でシールの内容を選んだのだろう。もしこのシールが各連合体内で独自に作られたものだとしたら、どちらがどちらを真似したんだろう。いや、そもそも、どうして色を変える必要があったのだろうか。
地元と違うシールを貼ることによって、より旅行者に印象付けるためだろうか?
いやちがう。それなら全く異なるデザインだって可能なはずだ。地域毎に特色を出すため?
いやそれも違うだろう。地方交通機関は性格上あくまで近隣の人のための事業体なのだから、他地域との違いを打ち出す、いわゆる
「差別化」 の必要性はない。
いったどんな意図で決定されたのかと、ボクの頭を悩ませる「赤」と「黒」。そもそもこれは、どんな人に印象付けるために色を変えて作られたのだろうか…。こんな違いをじっくり見るヤツもいないだろうから、変えたって意味ないじゃないか!?
…と、そうボクは思っていた。
その答えらしきものに、ボクは今日ようやく気付いた。まず「どんなヤツがこの違いに気付くのか?」、そして「どんなヤツに印象付けたいのか?」。どんなヤツ…。どんなヤツ…。ボクは気付いた。そう、その答えの一端が、いま日記を書いているということに。
蛇足1:
乗車料金は街ごとに全く違う。なのに不正乗車発覚時の罰金は、全都市共通40ユーロ。なんでだろぉ〜、なんでだろぉ〜♪
蛇足2:
赤と黒を同じ地域で見る可能性はないが、他の種類は混在する場合がある。しかしここにまた面白い現象があって、「40
Euro ist gross Geld」 の貼ってある地域に、「40 Euro ist nicht klein Geld
」 は存在しない。世の中は疑問だらけ。