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ドイツ生活・留学関連コラム


「 こっそり日記 」 選集
 不定期に書いている「kon.T のこっそり日記 」。ここではこれまでの日記の中から、特に面白そうなもののみ抜粋して掲載する。なお文章はあくまで日記としていい加減に書かれたものであり、内容や表現には多くの問題が含まれることをお許し願う。


日記の日付
タイトル
2006-06-10 (Sat) 夜なべする母親たちを想う…


「夜なべ」という言葉を初めて聞いたのは中学生くらいのことだったろうか。例の「母〜さんが〜夜なべ〜をして…♪」という童謡を聞いて、最初ボクの頭には鍋料理の仕込みに汗を流している古風な母親の姿が浮かんだ。

 しかしそのフレーズのなんと暗く物悲しいことか。火にかけた鍋の様子を見ているイメージの中の(なぜか)老婆は、ボクの中でいつしか鍋に入れてはいけないような何かを、夜な夜な煮込みつづける魔女の姿へと変貌していった。しかも不思議なことに、魔女は鍋の様子を見ながら手袋を編むというではないか。

 恐らく将来は貧乏生活を余儀なくされ、いつかは暗く寒い街の片隅で非業の死を遂げるであろうと信じていた少年時代のボクにとって、魔女が編むという手袋は自分の未来の象徴的なアイテムのような…、そんなわけの分からぬ妄想に駆られた時期があった。

 あれから15年。貧乏な生活に身をやつし、いつ物乞いをはじめようかと思案する生活が現実に始まってしまったわけだが、そんなボクでも夜なべと魔女が無縁の存在であることにはすでに気づいている。夜なべとは「夜仕事」のことで、あれは母親が息子のために夜中まで手袋を編んでくれたという話だ。夜なべをしてわが子のために何かを作る母。そこには日本的な風情が漂う。

そういえば最近うちの母は夜なべで作業しているらしい。しかしうちの場合は不甲斐ない息子のためではなくボクを飛び越えて孫、すなわちボクの兄貴の子供たちのために夜なべしているという。「小学生にもなれば学校でパソコンくらい使うはず…」。そう思っていま母が孫たちのために夜なべをして組くみ上げているのはパソコン。手袋を作っていた頃とは時代がまったく違うらしい。

 主婦を対象にした母のパソコン教室も、最近は受講申し込みが殺到して多数の順番待ちが発生していると友人から伝え聞いた。世の中の母親たちが囲炉裏を前に夜なべする時代は終わり、いまはパソコンを前に内職する時代なのだ。

 今の両親の年齢になったとき、ボクはいったい何をしているだろうか。日本の母親たちの進化を思うと…、きっと30年後のボクは…、夜なべして…



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