DSH について

03、実施と不実施 メニュー

重要
2004年6月に改訂された新しいDSH実施基準による試験が各地で始まったため、この項目は近く書き直されます。なお、以下は2000年にまとめられた Rahmenordnung を元に記述されています。記事訂正は2005年12月より順次行う予定です。あしからずご了承下さい。詳細は 近況情報 を参照

 DSHは大学での勉学に専念できるだけの語学力を示すものだが、これを必要としない場合もある。まず、大学間の交換留学の場合はまず必要ない。そもそも正規の留学ではないので、例え講義が分からなくても、大学側はそれに対して咎めたりしない。

 正規留学にも関わらず必要ない場合というのは、例えば音大。ここは技術第一主義なので、語学試験を科さない場合も結構多い。美術系も同じようなことが言えるが、音大よりは多少語学能力を重視する傾向が強いように思われる。そして研究者としての留学にもDSHを科さないことがある。例えば博士過程などで、学科全体が英語で通じる場合、特にドイツ語能力証明を要求しない (大学によって異なる)。

 また大学は大学でも、単科大学 FH (Fachhochschule) の場合、DSH 不要という場合も多い。これは学科によっても大きく異なり、全ての単科大学が同じワケではない。しかし語学能力証明をほぼ確実に必要とする総合大学 Universität の場合とは一線を画す。これらの大学・学科のへの入学の場合は DSH が必要ないだけでなく、大学そのものが DSH を一切実施しないことがある。

   さて問題は、語学証明を必要とするにも関わらず、DSH を実施しない大学がある点だ。例えばある DSH を実施しない大学の学生募集要項にはこう書かれている(茶色枠内参照)。

「語学能力証明書としては次のものが有効である。該当するいずれかの証明書添付のうえ出願すること」、「ZOP、KDS、GDS、TestDaF (ただし全科目においてレベル4以上)、DSH・・・・」。
 DSH の合格証も有効だと書いてあるくせに、自校では実施しない。つまりこれは 「過去に受けたことのある他大学の DSH の結果も有効ですよ」 とという意味だ。しかしこの程度の問題はまだまだ序の口。もっと問題なのは、入学許可証を送ってきたにも関わらず 「あなたは DSH によって語学能力を証明する必要があります。ただし本学では DSH を実施いたしません。他大学の証明書が有効です」 という場合。そしてこういう例、実を言うと結構多いのだ。

 例えば小規模な単科大学 FH のように、自力で DSH を行えないため、はなっから他大学に DSH を委託している場合もある。例えばハイデルベルク近郊のヴィープリンゲン単科大学 FH Wieblingen で音楽療法を学ぶ Nさんは、大学から 「Konstanz 大学の DSH を受けること」 と指示された。この場合、コンスタンツ大学の入学許可証は持っていなくとも、DSH だけは受験することができる。ちなみにハイデルベルクとコンスタンツは同じバーデン・ヴルテンベルク州にあるのだが、実は地理的には州の北端と南端。大学側に本当に受け入れる気があるのか否か、疑いたくなってしまう話である。
ヴュルツブルク大学からのメール(1通目) 02.02.2004
Sehr geehrter Herr *****,

bitte legen Sie baldmoeglichst das DSH-Zeugnis
(ohne Auflage) der Universitaet Heidelberg in
amtlich beglaubigter Kopie vor.


Mit freundlichen Gruessen
I. A.


***** ****
Akademisches Auslandsamt
Universitaet Wuerzburg
Sanderring 2
D-97070 Wuerzburg
Tel. 0931/31-2227
laug@zv.uni-wuerzburg.de
注意: 個人攻撃を避けるため個人名のみ **** で伏せた。


 そしてもっと酷い話は、2004年2月にヴュルツブルク大学 (Uni Würzburg) からボク自身が受けた対応だ。入学願書を郵送してしばらくしてから、同校から次のような E-Mail が届いた(緑枠内参照。原文をそのまま引用)。

 内容はつまり 「どうぞできる限り早く、ハイデルベルク大学のDSH合格証(成績書)をコピー証明して提出してください」、とある。この場合、「ohne Auflage」 を 「義務ではない」 と訳すべきかちょっと困ったのだが・・・、え? それ以前に、前回は落ちたから成績証明書なんて存在しないじゃないか。確かに今回はまたハイデルベルクのDSHも受けるが、試験は約2ヵ月も先のことだし、なにより入学許可証をまだ受け取っていないから、DSH を受けられるかどうかも今は分からない。そこでボクは翌日、次のような内容の返信をした。

 「あなたからのメールを受け取りました。メールには、早期にハイデルベルクのDSH合格証を送るように書かれていました。もし出願用紙に書いた私のドイツ語に不備があり、誤解されたのだとすれば大変申し訳なく思います。

 確かに私は前回ハイデルベルクの DSH を受験しましたが、残念ながら不合格でした。ご存知のように、不合格者に対しては如何なる証明書も発行されません。そういう理由で、あなたの要求する書類を、私は提出することができません。もし貴校から入学許可証を受け取ることができた場合も、まずは貴校の DSH を受けねばならないでしょう。 ・・・云々」

 このメールに対して同大は翌日、2通目のメールを送ってきた。差出人は前回のメールと同一人物。これも原文のまま掲載する。要約すれば、「提出された語学学校の在籍証明書によると、あなたは3月26日まで、ハイデルベルク大学の DSH のための準備クラスに参加しているとのこと。どうぞまずは今一度、ハイデルベルク大学の DSH を試してみてください。そして合格したら、その証明書(成績書)を公的にコピー証明した上で、できるだけ早期にご持参下さい」 と言っている。
ヴュルツブルク大学からのメール(2通目) 05.02.2004
Sehr geehrter Herr *****,

eine Bestaetigung des Paedagogikum Heidelberg
belegt, dass Sie bis 26.03.2004 in einem
Vorbereitungskurs fuer die DSH-Pruefung an der
Universitaet Heidelberg teilnehmen. Bitte versuchen
Sie noch einmal an der Universitaet Heidelberg die
DSH-Pruefung zu bestehen und legen das DSH-
Zeugnis (ohne Auflage) in amtlich beglaubigter
Kopie an der Universitaet Wuerzburg
baldmoeglichst vor.


Mit freundlichen Gruessen
I. A.


***** ****
Akademisches Auslandsamt
Universitaet Wuerzburg
Sanderring 2
D-97070 Wuerzburg
Tel. 0931/31-2227
laug@zv.uni-wuerzburg.de
注意: 個人攻撃を避けるため個人名のみ **** で伏せた。

 つまりヴュルツブルク大学は、ボクが前回 DSH に受かったと勘違いしたわけではなかった。はなっからそんなことは承知しているのだ。前回のことは全く問題にしておらず今回の、まだ実施されていない DSH の合格証のことを言っていたのだ。

 しかしこいつはおかしい。読む限り、他の書類に関しての不備は一切指摘されていない。ただ DSH の語学証明のみを問題にしている。このメールは、どう読み返しても、「DSH 合格証さえ持ってきたら入学できますよ」 と言っているようにしか取れない。なぜなら、ヴュルツブルクの DSH はハイデルベルクよりもずっと早く行われるのだ。もしボクに対して入学許可証を発行する気がないのなら、自校の DSH が終わったあと願書書類の追加を求めるはずがないではないか。

 書類に不備はなく、DSH にまだ合格していないということを除けば、入学するに必要な資格を全て有していることを、大学は暗にほのめかしている。にも関わらず、何故か入学許可証を送ってこない。他大学の DSH を問題にしているのだから、自校の DSH を受けさせる気もないらしい。これはいったい如何なる理由か? そもそも、担当者は自分の言っていることを理解しているのか? ボクはこのメールを何度となく読み返し考えに考えた末、4日後これに対する次のメールを送った。

 内容はこうだ。「ハイデルベルク大学の入学許可証は、2月中旬か下旬に発送されると聞いています。ですからもちろん、同大からの許可証を私は未だ受け取ってはおりません。しかしあなたは前回のメールに、こう書かれました。私がヴュルツブルクの入学許可証を受け取るためには、まずハイデルベルクの DSH 合格証を提出してくださいと。それはつまり、ハイデルベルクの DSH に受からねば、ヴュルツブルクで勉強することはできないということですね? しかしそれは本当でしょうか。

 それは更にこういうことでもあります。つまり、もしハイデルベルク大学から入学許可証をもらうことができねば、ヴュルツブルク大学の入学許可証も受け取ることはできないということです。なぜなら入学許可証がなければ、DSH もまた受けることは出来なのですから。今現在の状況においては、私がハイデルベルクの入学許可証を受け取れるか否か、それすら分かりません。

 そこで私は再度お尋ねしたく存じます。私はヴュルツブルクの DSH に挑戦させてはいただけないのでしょうか? また如何なる理由によって、入学許可証を送って頂けないのでしょか? あるいは、私が送付致しました書類何か不備でもありましたでしょうか?」

 これを送ったのは2004年2月9日で、これに対する返事は一週間待っても届かなかった。そこで同17日に再度、返信要求のメールを送ったが、ついに返事をもらうことはできなかった。ちなみに、入学許可証をもらえない場合は、Zulassung の代わりに受入れ拒否 Ablehnung が届くことになっている。Ablehnung には、なぜ受け入れられないかという理由が明記され、封筒には出願した書類の一切も同封され返却される。しかしヴュルツブルクからは Ablehnung どころか、書類の返却さえなかった。それは Zulassung をもらった場合の待遇と同じなのだ。ボクはこの対応に、とても不満を覚えた。

 とにかくボクの提出した書類に不備はなかったようだ。にも関わらず、どうしてこういうことが起こるのか。この理由に関しては別稿にも詳しいので参照して欲しいが、つまり要件は全て満たしているものの、しかし受け入れるだけの枠 (定員)が足りないのだ。そういう場合は、出願書類の書き方が悪いとか、読みにくいとか、ありとあらゆる難クセをつけて不受理にするのだが、不受理にする理由を見出せない場合、ついに大学は困ってしまう。仕方なく無作為に選んではみたもの、抽選漏れした人に、さてどうやって弁明すればよいか、うまい理由が見つからない。

 かと言って書類上合格した全ての人間に入学許可証を送っては、先述の Ausländerquote の規定に抵触してしまう。そこで大学は考える。「どうせ DSH に落ちれば、与えた入学許可証も紙切れ同然。しかし有効な許可証を規定数以上発行する事は不可能だ。それなら、DSH を終えて、DSH 不合格者の許可証の効力が消えてから、改めて許可証を発給しよう」と、恐らくはこのような考えではなかろうか。

 この3通のメール送信後、こちらも二度とメールを送らなかった。あるいは 「代わりに DSH を受けられる大学を紹介してくれ」 とでも書くべきだったろうか。いやそれも違う。恐らく何を書いても無視されたろう。そもそもDSHの実施には、実はかなりの経費がかかるのだ。多くの大学が ZOP や TestDaF を推奨するのはこのためで、もし実施しなくていいものなら DSH などやめてしまいたい、と考える大学があってもそれは不思議ではない。ましてや他大学の志願者のために DSH 試験を受けさせてやるなど、正に「お門違い」。上記のヴィープリンゲン単科大学が遥か遠い Konstanz大学に DSH を委託したのも、そんな難しい状況の中で、ようやくコンスタンツ大学が請け負ってくれたという事情からかもしれない。

 一人の外国人が、多くの大学に願書を出すのは、何も入学許可書の発給率が低いからばかりではない。発給されても、確実に DSH を受けられるという保証はないからだ。本当に学びたいなら、できるだけ多くの大学に願書を出すべきだろう。


2003.10.21 kon.T
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