試験を受けるのだから筆記用具が必要だ。この時点で既に間違いをおかしている日本人がいるのだが、ドイツでは 「鉛筆・シャープペンシル禁止」 だ。もし鉛筆やシャーペンで解答を記入した場合は、全問不正解 → 不合格 となるので要注意。伝統的には万年筆が使われるのだが、現在はボールペンでもOKだ。しかしここで日本人にとっては大きな疑問がある。そう、「間違って書いたらどうするのか」
である。方法は4つある。
1の方法はもちろん誰にでも考えつくはずだが、しかし同じ個所を何度も直そうとすると…、大変な事になってしまう。特に作文 TP 時は少しのミスでも減点対象になるため、一度書いたあともう一度見なおさねばならない。当然にも書いた直後、見直し時、提出直前など、答案用紙には非常に多くの修正が見られるはずだ。左の写真は1の方法で修正してみた例だが、直せば直すほどどんどん見難くなっていくのがわかる。こうならないためには、普段からインクで各練習をしておくこと。直さなくても一発で思った通りの文章を書けるようにしておくこと。これに限る。
しかしそうは言っても、もともとシャーペンや鉛筆で書くことに慣れている日本人に、これはそう簡単なことではない。書いた後で消したいと思うのは仕方のないことだ。そこで第2の方法が「インク消し」である。ドイツ語では
Tintenlöscher というのだが、これはもともと万年筆で書かれた文字を消すためのもので、普通のボールペンのインクを消す事はできない。筆記用インクといえば瓶入りの物を思いだすが、万年筆の場合はカートリッジに入っている。基本的には瓶入りインクがカートリッジの中に入っているわけだが、要はこのインク以外は消えないのだ。
そこでボクは最初のDSHのために、仕方なく万年筆で各練習を始めた。しかし誰でも知っての通り、万年筆というのは上手く書かないとインクがたくさん出てしまう。上からこすればインクは広がる。すぐに乾かないからすぐ手に付く。手に付いた付いたインクが紙を汚す…、と実に使いにくいものなのだ。しかもテスト中など大急ぎでペンを走らせ、場合によっては思わず力を込めてしまうような状況下では非常に使い勝手の悪い代物である。
当時のボクは困り果てたのだが、ある日のこと店頭に新製品が並んだ。なんと万年筆用のカートリッジを使うボールペンが発売されたのだ。ボクは即これを購入し、最初のDSHはこいつでの臨むことになった。字を書いてみる、そしてインク消しで消してみる…。「消えるじゃないか!」
ボクは有頂天だった。思わず5本も買ってしまった。インク消しも3本買ってしまった。
さて、ドイツで普通に売っている万年筆用のインクカートリッジといえば規格は1種類しかない。代表的な発売会社は日本でも知られる Pelikan 社で、他社製のもの同社のカートリッジ規格に合わせて作られている。カラーはいろいろあるものの、テスト用ならば Royalblau と呼ばれる青がよい。日本でボールペンといえば色は黒に決まっているが、ドイツではあらゆる公式文書で Royalblau が使われる。印刷物はみな黒インクで刷られているので、署名をはじめおよそ手書きするものは青のが見やすいという事なのだろう。
しかしだ、いくらボールペンにこのカートリッジが使えるからといって、インクはもとよりカートリッジ自体も万年筆用に開発されたものだ。だからやっぱりボールペンとしては若干使いにくさを感じる。日本で普通に売っているボールペンの、3倍くらいインクが出ると考えてもらえれば分かりやすいだろうか。しかもボールペン用インクと違って水っぽいために、万年筆同様やっぱり擦(こす)れに弱い。ボクはただ、テストの時に消せるという理由だけでこのボールペンを使っているので、普段の生活で使おうとは思わない。
ここから更に2年が経過して通算6回目のDSHを受ける直前、また素敵な新製品が発売された。これはボールペンで、インクカートリッジもボールペンとして開発されたものなのだが、しかし中身のインクには万年筆用と同じものが使われている。以前から使っているボールペンのように万年筆用のカートリッジを無理矢理使うのではなく、カートリッジはペン先も一体形成されているので接続部分からインク漏れも無ければ、ペン先から必要以上のインクが出ることもない。ふっ、これを知った瞬間ボクは惚れたね…。これでようやく普通のボールペンのように記入でき、しかも消せるペンが手に入った。
さて、インク消しについても説明しなければなるまい。文具店でなくても、以外にスーパーでも売っているドイツでは当たり前の商品なのだが、売れ筋はやはり Pelikan 社製。日本製の 「油性名前ペン」 の様にペンの両端にペン先がある。一方がインク消しで、もう一方は青ペンになっている。実はインク消しで字を消してしまうと、消した所にはもう書く事ができないのだ。そこで、消した上からでも書く事のできる専用のペンが必要となるのだが、これがインク消しの反対側に付いているペン。ちなみに、このペンで書いた字をインク消しで消す事はできない。つまり修正可能なのは1回のみということになる。
Perikan 社製以外のもの同社のものと同様の形をしている。一流メーカー製ではないものも使ってみたが、この商品に限ってはどこの製品も差がないように思う。Perikan 社製は一本1ユーロちょっい。間違っても2ユーロもする代物ではない。一方、安物だと3本セットで1ユーロくらいだろうか。DSH用という事であればこんなところでケチらず一流メーカー製を使おう。そもそも高いものではないのだから、ここは一つ安心感を買おうではないか。
2003.10.21
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