DSH について

01、試験の性質 メニュー

重要
2004年6月に改訂された新しいDSH実施基準による試験が各地で始まったため、この項目は近く書き直されます。なお、以下は2000年にまとめられた Rahmenordnung を元に記述されています。記事訂正は2005年12月より順次行う予定です。あしからずご了承下さい。詳細は 近況情報 を参照


まずは出願の仕組みを理解しよう
 ドイツには日本のような大学入学試験がない。それはギムナジウム Gymnasium の終了試験 Abitur に合格した事によって、学生となるべき資格が既に与えられているからである。つまりアビトゥーア Abitur の合格証さえあれば、原則としてどこの大学でも勉強できるわけだ。しかしだからと言って 「本当にどこの大学でも可能か」 というとそういうワケではない。
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 まず志望校を2校くらいに絞って出願する。この出願をもとに、学生らをどこの大学に振り分けるかを決定するのはドルトムントにある入学者中央配分センター (ZVS - Zentralstelle für die Vergabe von Studienplätzen)。これは特定の大学の特定の学科に、学生が集中するのを防ぐためだ。このとき基準になるのは Abitur の成績であって、もし特定の学科に出願が集中した場合、成績証明書の内容の良い人の志望が優先される。これがドイツ人の大学出願形式であって、日本とは大きく異なることが理解できるできるだろう。ドイツの各大学は、日本の大学のような入学試験を設けていない。

 これはドイツの大学で学ぶ事を希望する外国人、つまり外国人大学入学志願者 ausländische Studienbewerber であっても同じだ。基本的に入学試験 die Aufnahmeprüfung というものはない。ただしドイツ人と同じように Abitur の成績表 das Abitur-Zeugnis は必要だ。日本人の場合は高校卒業がギムナジウム卒業に該当するため、高校の卒業証明書と成績証明書を提出すればよい。ただし高校卒業はギムナジウム卒業に比べ就学期間が一年短いため、これに追加して大学の証明書が必要だ。これについては別稿に詳しいので参照して欲しい。

 ドイツ人と外国人入学希望者との大きな差は、ドイツ人の場合のように中央機関の干渉がない。外国人は入学したい大学に直接申し込み、大学は自校の外国人受け入れ枠 Ausländerquote (外国人割合あるいは外国人比率、大抵は8%と思われる) の範囲の中で受理・不受理を決定する。つまり留学生に関してのみは、各大学の裁量に委ねられているわけだ。


入学試験と語学試験 
 DSH - die Deutschesprachprüfung für den Hochschulzugang ausländischer Studienbewerber を 「入学試験」 と誤解している人がよくいる。我々日本人にとっては同じようなものなのだが、ドイツ人にとってはかなり違うらしい。とにかく大学に出願し、大学側が入学許可証 das Zulasungsbescheid (あるいは 入学許可 die Zulassung) を発給した時点で、大学はその者が学生になる資格を有している事を証明している。例えば入学許可証を持参すれば学生寮の申し込みは大抵可能だし、各種学生割引の対象となる場合も多い。

 ただし学生になる基礎的資格は認められても、ドイツで勉強する以上はドイツ語を理解できねば話しにならない。入学試験を受ける必要はないが、ドイツ語を理解できるという証明はしなければならない。これを証明するにはゲーテインスティテュート Goethe Institut の ドイツ語上級統一試験 ZOP (Zentrale Oberstufenprüfung) 合格証明書が必要だ。かつては ドイツ語中級統一試験中級試験 ZMP (Zentrale Mittelstufenprüfung) でもOKだったが、今日ではほとんど認められない。この他、次の資格を持っている者も、十分な語学能力を証明できる。

KMK
PNdS
DSH
KDS
GDS
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das Deutsche Sprachdiplom der Kultusministerkonferenz
die Prüfung zum Nachweis deutscher Sprachkenntnisse
die Deutsche Sprachprüfung für den Hochschulzugang
das Kleine Deutsche Sprachdiplom des Goehte-Instituts
das Große Deutsche Sprachdiplom des Goehte-Instituts

 しかしこれらのどれにも該当しない人はどうすればいいのか。もちろん ZOP か TestDaF (der Test "Deutsch als Fremdsprache") に挑戦すればいい (受験料は安くないが)。しかし可能性はもう一つ残されている。これが大学毎に実施する DSH であって、この合格証は ZOP 同様、公式資格として認められる。上記の説明で分かるように、他の証明書があれば本来 DSH は受ける必要がないので、これを入学試験と呼ぶ事はできないのだ。

 時々これを理解できない人がいて、願書受付窓口で 「入学試験 (Aufnahmeprüfung) は・・・・?」 と聞いたりする。当然にも窓口担当者は 「そんなものありませんよ」 と言い、当の本人は 「あぁ、入学試験はないんだ! なんだすぐ学生になれるのか!」 とヌカ喜び。だから我々は、まずこの違いを十分に理解しなければならない。


DSH は振り落とし試験ではない
 日本の大学入試は 「振り落とし式」 である。限られた定員に対し多くの入学希望者が殺到する場合、当然にも試験を科してより優れた者を受け入れ、比較的能力の低い出願者を振り落とす。それは当たり前のように思えるかもしれないが、ドイツはそうではない。そもそもほとんどの学科に 「定員」 がないのだ。ちなみにドイツ人の場合だが、定員のある学科で、しかもその定員より多く人が志願した場合、 「Abitur の成績の悪い人はごめんなさい」 ということになる。しかし 「ごめんなさい」 と言われた志願者には、次回の募集時に優先権が与えられる。

 さて外国人の場合はどうか。アビトゥーアに準じる資格を持っていればいいのだが、その成績内容に関しては 「ほとんど不問」。これは当然で、試験制度が受験者に対して何を求めているかは国ごとに違うし、評価方法に至っては差が非常に大きい。一概に外国人の成績を比べて甲乙をつけることは不可能なのだ。ただし、「どれだけの教科を学んだか」 についてはチェックしているらしい。もっとも、日本の場合のように教科選択の幅が狭く、ほぼ全ての高校生が殆ど変わりない教科を受けている場合は恐らくノーチェック。だから我々外国人は、提出書類に記載された成績によって受け入れ拒否をされることはまずないと考えてよい。

 ただしこれには例外があって、NC (Numerus clausus = 入学者数制限) のかかっている学科については、外国人であっても提出された成績証明書の内容を考慮に入れるらしい。これが上記の 「外国人の成績を比べるのは不可能」 という記述に矛盾するのは誰にでも分かるだろう。日本などは、大学や高校そのものにレベルの差がある。高校が違えば評価の土俵が違うから、そんなの日本人同士でさえ、どちらが優れているのか成績表だけでは判断できやしない。

 にも関わらずドイツの大学が成績表の中身をチェックするのは、そこが NC だからだ。はなっから定員に制限があり、ほとんどの志願者を切って捨てねばならない。しかしどの外国人志願者を切り捨てようか迷ったところで、比べるものがなければ切り捨てようがない。そこで仕方なく、成績表の中身が問われることになる。NC の学科だけは、とにかく例外だ。

 また DSH に関しても、これは振り落とすための試験ではない。入学許可証が発給された時点で、その名の通り 「既に入学可能」 な状態にある。DSH の合格者人数調整というのはなく、ある一定ラインの成績を取れば必ず受かることになっている。つまり、全員が100点満点だったなら全員受かるのだ。日本の予備校では、「他の受験生が病気で休めば、それだけ合格の確率が上がる。もし他人が風邪なら近寄るな!もし風邪を引いたら他人にうつせ!」 なんてことを講師が言ったりする。しかしDSHに関して、こういうことはあり得ない。他の受験生は決して敵ではないのだ。

そもそもDSHとはどう定義づけられているのか
 さて順序が前後してしまったが、最後に 「そもそもDSHとはどういうものなのか」 を説明しよう。かつては外国人大学志願者用の語学テストとして PNdS - die Prüfung zum Nachweis deutscher Sprachkenntnisse があったが、1995年3月に行われた大学総長会議を機に新しい試験システムが始まった。このときに決まったのが DSH であり、詳細は Die Rahmenordnung für die Deutschesprachprüfung für den Hochschulzugang ausländischer Studienbewerber にまとめられた。この枠組規定によれば…、

 DSH は一般的な会話能力に加え学術領域での読解・記述能力など、学生として大学で学び研究するうえで必要な語学能力の有無を試すもである。また、DSH は筆記試験と口述試験 schriftlische und mündliche Prüfung に分かれ、筆記試験は次の4科目を3〜4時間で執り行われるものとする。

 1、Verstehen und Verarbeiten eines Hörtextes (聞き取り)
 2、Verstehen und Bearbeiten eines Lesetextes (長文読解)
 3、Vorgabenorientierte Textproduktion (作文)
 4、Verstehen und Bearbeiten wissenschaftlicher Strukturen (文法)

 上記3と4の領域については統合し、計3科目とすることもできる。口述試験では一般的な学術問題、あるいは個々の受験者の志願学科に関する内容の質疑応答を行う。また筆記試験と口述試験の採点比率は2:1とし、全体の2/3以上の正答によって合格とする。

 とされている。しかし実際には口述試験を科さない場合が多い。というのも試験の合否は大抵筆記試験のみで決まり、得点が合格基準点すれすれの場合に限り口述試験を課すのが一般的だ。口述試験を課された受験者の中には 「筆記試験は合格したので、あとは口述試験のみ」 と吹聴している者もあるが、これは誤解である。あくまで Zweifelfall、つまり 「合格させる能力としては些か疑わしい場合」 であり、口述試験とはむしろ筆記試験においてわずかに合格点に至らなかった志願者を救済するための 「敗者復活戦」 としての性質が強い。


2003.10.21  kon.T
2005.10.05 追加修正 in Heidelberg, HRZ
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