日本円をユーロに
銀行から銀行への口座振込について

はじめに
 本稿は、ボク自身が自己の生活のために送金する方法を調べた内容であり、ここに紹介した金融機関等から何らかのリベートを受けるような、いわゆる 「ちょうちん記事」 ではない。各金融機関サービスの長所のみならず短所も存分に挙げることで、多くの留学生の参考としていただくべき執筆した。
 しかし金融商品と言うものは本来非常に複雑なもので、素人がやすやすと論じられるものではない。したがって本稿にはボク自身の誤解を含む可能性もあるし、また本稿によって威信を失う金融機関からの突き上げ等も予想される。
 本稿は読者や関係機関からの指摘によって随時更新・改訂される可能性があるため、読者諸氏はこのページから得た情報を鵜呑みにせず自己責任で行動していただくことを願う。ボク自身があくまで一留学生として、自分のために集めた情報であることをここに改めて明記し、他のいかなる勢力からの恩恵も受けずに本稿を執筆したことを宣言する。じっちゃんの名にかけて

振り込み前に口座を準備 メニュー
 前節で説明したように、銀行で日本円をユーロ紙幣に交換すると、1ユーロあたり3円程度の両替手数料を必要とする。旅行者ならともかく、多くの現金を両替する場合にまでこのような損失の大きい手段を使い続けるわけにはいかないのだが、さてそれではどのような方法を使うべきか。まずここでは銀行からの口座振り込みについて説明する。

 振り込みには大きく2種類ある。銀行の窓口に現金を持って行って、これを送金する方法。もう一つは銀行口座に入っている預金の一部を相手の口座に振り込む方法だ。前節で説明したように、一般的には口座間で送金を行う方が手数料は安く済む。例えばA銀行から振り込もうと思えば、A銀行の自分の預金口座から振り出すわけだ。もしこれから振り込みを行おうと思うならまず銀行に預金口座を開設し、それから振込手続きを行うようにしよう。

「送金手数料」 について
 送金時にかかる費用 「海外送金手数料」。この設定は銀行毎に大きく異なる。A銀行から海外の銀行口座宛てに振り込む場合は4500円、B銀行からの場合は5500円、C銀行からC銀行の海外支店口座に振り込む場合は3000円で、D銀行からテレフォンバンキング経由で振り込む場合は3500円…、などなど。いったどこからどのように振り込むべきなのだろうか

 銀行のパンフレットをよく読むと、「このほかに海外の金融機関で別途手数料の発生する場合があります」 という説明書きもある。海外で発生する手数料というのはいったいいくらなのだろうか。この手数料は振り込み元の銀行によっても差があるのだろうか? 「発生する場合がある」 というのは、「発生しない場合もある」ということなのだろうか。疑問は尽きないが、これらの質問に対する回答は全て 「わかりません」 というのが正しい。

 とにかく送金にかかる手数料の総額がいくらになるのか、送金時点でそれはほとんど分からないのだ。だから銀行の案内パンフレットに書かれた「海外送金手数料」の項目のみを比べてみただけでは、実際はどこの銀行から送金するのが最も安いのかを判断することはできない。

「別途発生する手数料」 について
 「海外の金融機関で別途発生する場合がある手数料」 とは何のことなのか、まずはここから説明しよう。日本国内のインターネットバンキングを利用している人は分かるかもしれないが、同じ銀行、あるいは同じ銀行の同一支店間の振り込みには、手数料が一切発生しない場合がある。

 もちろん銀行によっては徴収する場合もあるが、本来のシステム上は手数料を支払わなくても振込可能である。これに対し、インターネットバンキングを使おうが使うまいが、他行宛ての場合はどうしても手数料が発生する。これは受け取り側銀行も手数料を要求するためだ。

 同一銀行間であれば利用者が直接PCで振り込み作業をするため、行員の手を煩 (わずら) わせることがない。だから手数料はかからない。しかし他行宛てになるとなんらかの作業が必要となるらしく、ここに手数料が発生する。ここまでは日本国内での送金の話。

 さて海外送金の話に移ろう。受け取り側 (つまり送金先) 銀行が料金を徴収するのは同じだが、いくら徴収するのかは日本からの振り込み時点で (振り込み元となる) 銀行側はまったく情報を持っていない。だから実際に振り込み操作が完了するまでは、手数料合計がまったく分からない。

 次に重要なのが銀行間のコルレス契約である。日本国内の場合、あらゆる銀行・信用金庫 (郵便貯金を除く) が提携しているため、A銀行からB銀行に直接振り込み指示を出すことができる。しかし海外送金の場合はそう簡単にはいかない。あくまで立て替えによる帳簿操作が 「振り込み」 である以上、常に立て替えが成立する銀行間でしか振り込み操作はできない。

 例えばボクが日本の米々銀行から、ドイツに住む彼女のためにドイツの Kartoffel Bank に 1000ユーロを振り込むとしよう。米々銀行の指示で Kartoffel Bank がボクの彼女の預金口座に 1000ユーロを加算する。

 しかし実際に米々銀行から 1000ユーロを受け取ってなどいない Kartoffel Bank はその時点で赤字であり、帳簿上は米々銀行に 1000ユーロを貸し付けている形となる。

 何度も書いたように、振り込みというのは現金を動かさない帳簿上の取引である。だからこの貸しつけ分も米々銀行が Kartoffel Bank にあとで直接現金を送りつけるのではなく、次の反対振り込み時に相殺 (そうさい) されることになる。

 仮に Kartoffel Bank から米々銀行へ、他の人から 1000ユーロの振り込みがあるならこの貸し借りは帳消しとなるはずだ。ところが今だかつて一度も取引をしたことがないような金融機関同士では、そのような帳消し事由が発生し得ない。だから取引関係の希薄な銀行間では直接の振り込みが不可能なのである。

コルレス先について
 しかしだ、恐らくは国内の銀行間であれば多少なりとも必ず取引関係があるに違いない。それは日本国内の金融機関で常に相互に送金が可能であるのと同じこと。そこで銀行はある特定の銀行と取引契約を結ぶ。例えば米々銀行からドイツに向けて振り込む場合、常にまず最初に Tomato BANK に振り込み、そこからは Tomato BANK が米々銀行に代わって Kartoffel Bank に振り込んでくれるようにお願いする。

 米々銀行と Kartoffel Bank に取引関係がなくても、Tomato BANK と Kartoffel Bank との間に日々の取引関係があればよいのだ。相互に信頼できるパートナーを仲介することで振り込みを可能とするこの銀行間の約束を 「為替取引契約 (Agency Agreement)」 とか 「コルレス契約」 といい、相手をコルレス (Correspondent) 先とかコルレス銀行などと呼ぶ。

 コルレス契約の詳細については割愛しておき、ここではコルレス先を経由する送金についてもう少し説明しておこう。もう一度、米々銀行から Kartoffel Bank の彼女の口座に 1000ユーロ振り込むことを想定しよう。そして米々銀行からの海外送金手数料が送金額に関わらず一律4500円、1ユーロを100円とする。

 この場合1000ユーロ = 10万円 で、手数料と合計すると 104,500円 となる。米々銀行はまず Tomato BANK 宛てに送金するわけだが、4500円はここまでの手数料である。ここから先の Kartoffel Bank へは Tomato BANK が振り込み手続きを行うのだが、当然にも Tomato BANK 側が受け取るべき手数料が発生する。更に最終受け取り手である Kartoffel Bank もいくらかの手数料を取る。

 そして場合によってはその前に、コルレス先である Tomato BANK が 「入金手数料」 を取る場合もある。分かりやすく言うと、米々銀行が Tomato BANK に送金するという事は、Tomato BANK にある米々銀行口座に一度お金を入金することを意味し、この時点で入金側の Tomato BANK が入金処理手数料を取る。

 そののち、この口座から Kartoffel Bank に振り込まれると考えると、米々銀行の海外送金手数料 4500円 + Tomato BANK 入金手数料 + Tomato BANK 振込手数料 + Kartofel Bank 入金手数料 という計算になる。

 しかしこれはあくまで例であって、既に Tomato BANK 内にある米々銀行口座に相当額の米々銀行自身の預金がある場合、Tommato BANK での入金手数料は発生しない可能性がある。このように日本の銀行がコルレス先銀行に最初から預け金を置いている場合、このコルレス先を 「デポ・コルレス」 という。

 これに対し預け金 (為替決済勘定) を置かず、双方の信用のみでことを済ませるコルレス先を 「ノン・デポ・コルレス (Non-Depository Correspondent)」 という。一般的には ノン・デポ 経由の方が総手数料は高くなるのだが、振り込み時にどのコルレス先を使うかは不明なことが多いため、送金手続き時には必要手数料も不明である。

 また最終振り込み先銀行とコルレス先との間に取引関係がない場合は、複数のコルレス先を経由する場合もある。そのうえ米々銀行が自分のコルレス先に振り込むのに、別のコルレス先を一度経由して送る可能性もある。海外送金可能な銀行は大抵ドイツ国内に複数のコルレス先を持っているのだが、全てのコルレス先が デポ・コルレス とは限らないからだ。

 デポ と ノン・デポ がある場合に、日本の銀行は デポ を優先的に使いたいらしく、結果として一つで済むはずのコルレスを二つ経由しなければならなくなったりもする。ここには銀行側の思惑が関与するため、われわれには非常に不透明であり、手数料も不明。同じ相手に振り込む場合でも、振り込むたびに手数料が変わるなど不安要素が大きいのはこのためである。

コルレス先を確認しよう
 では、どうすれば安く送ることができるのだろうか。早い話、経由するコルレス先を減らせば安くなるはずだ。例えば米々銀行が Tomato BANK とコルレス契約を結んでいるならば、ドイツでは Tomato BANK に口座を開くことで安く送金することが可能だ。日本の銀行がコルレス先としてよく利用するドイツの銀行は、Deutsche Bank、Dresdner Bank、KOMMERZBANK  (ドイツの三大銀行) などで、送金先がこれらの銀行の場合は送金手数料を削減できる可能性がある。

 例えば三菱東京UFJ銀行の場合はドイツに5行ほどのコルレス先があり、2006年現在は上記の3銀行も含まれているようだ。しかし問題はそのうち 「どれが デポ・コルレス か」 ということ。例えコルレス先である Deutsche Bank に送金するとしても、もしここが ノン・デポ であった場合、他のデポを経由して Deutsche Bank に送金される可能性もある。重要なのはデポ・コルレス先を知ることだ。

 しかし実はこれ…、非常に流動的なものらしい。銀行によっては 「集中先」 とも言うyようだが、とにかく海外に保有する預金残高はできるだけ1ヵ所に集中させたい銀行側の思惑から、同一国内に複数のコルレス先がある場合、全てをデポ・コルレスにせず、 デポ と ノン・デポ を並存させている。そして集中先は変更されることもしばしばで、半年前は Deutsche Bank が集中先だったのに、今は KOMMERZBANK に変わってしまっている、などというのは往々にしてあるらしい。

 ここまでくると、デポ・コルレス先を狙い撃ちするのは難しい。それにドイツの銀行口座維持手数料は銀行毎に異なり、また地理的状況から使い勝手も大きく異なるため、日本での取引銀行のコルレス先に合わせてドイツでのメインバンクを決定するのも考えものだ。

 そこでドイツ生活においては、自分にとって最も便利な銀行、つまり自宅近くに支店や ATM があるとか、口座維持手数料が安いとか、あるいは最もよく振り込む相手 (例えば語学学校や Stadtwerke) と同じ銀行に口座を持つなど、トータルとして有用な銀行をメインバンクにしよう。そしてそれとは別に日本からの送金を受ける専用口座として、使い勝手は悪くても口座維持手数料の比較的安いタイプの契約を大手銀行で結ぼう。


日本国内のメインバンクを選ぶ
 すでに述べたように、海外送金手数料は銀行毎に大きく違う。ではどこから送るのが最適だろうか。はっきり言ってこれをこの場で明言することはできないのだが、その理由は 「システムが常に不明瞭」 であるからだ。よってドイツ生活を希望する読者諸氏は、自分の目でパンフレットを見比べ、自分の耳と口で銀行に問い合わせて判断して欲しい。

 そのときに重要なのはコルレス先の把握と海外発生手数料の徴収方法、送達予定日数、インターネットバンキングサービスの有無、海外からの送金指示を受けつけるか否か、それに日本国内向け振り込み手数料の安さ、である。

 両親の庇護を得ず、自力で渡欧する人にとっては海外からの送金指示、つまり日本にある自分の口座から電話やFAX、またはインターネットを通じての海外への送金手続きを受けつけるか否か、といったことが特に重要だ。もちろんインターネットバンキングを無料で利用できれば、海外から自力で預金操作ができる。だからインターネットバンキングが海外のパソコンに対応しているか否かも重要なチェックポイントである。

 逆に、日本国内の実家のそばに支店があるか否かについては大きな問題ではない。こういうことまで考慮に入れると、地方出身者は選択肢をほとんど奪われてしまうだろう。そこで、地元の銀行をメインバンクとし、海外送金が可能な銀行をサブバンクとする。そしてこの両銀行間の預金のやり取りはインターネットバンキングで可能にする。国内向け送金手数料の安さも考慮に入れねばならないのはこのためである。

 とにかくメインバンクは日本の家族や頼りになる友人の地元に置こう。これによって、日本の銀行で何らかのトラブルが発生した場合も、友人や家族に委任状を与えることで解決が可能である。また、メインバンクが機能しなくなった場合に備え、代わりとなる銀行にもう一つ口座を開設しておこう。万が一の時にはメインバンクからこちらにインターネットを通じて全預金を移動させればよい。

 さて日本のメインバンクに要求するスペックだが、これはただ国内向け振込手数料が安くて、インターネットバンキング・システムが快適であればそれでよい。お勧めはインターネット専業銀行をメインバンクとし、地元銀行を第2メインバンクとすること。ネット専業銀行はトラブルが起こっても全てをメールで解決することができるから比較的早期に自力解決が可能だ。

 そしてどうにもならなくなったときの最終手段が地元銀行。このように、日本国内にはインターネットバンキング指示が可能な最低2行以上の銀行と契約を結ぼう。

海外送金用の銀行を選
 海外送金というのは、どの銀行からでもできるわけではない。通常、海外送金をするためには国際銀行コードである SWIFTIBAN が必要だ。しかし国内全ての銀行がこのコードを保有しているわけではなく、結局は大手銀行に頼る他はない。

 実を言うと、中には国際コードを持っていないのに海外送金が可能な銀行もたくさんある。これは国内の海外送金可能な銀行をコルレス先にしているのだが、当然にコスト高となるので要注意。そしてこういう銀行は結構多いのだ。

自前の国際コードを持っているか否か、海外コルレス先はどこか。これらは銀行のホームページで公開している場合もあるが、公開されていない場合も多いので銀行に直接聞いてみよう。

海外発生手数料の徴収法-1
 次に 「海外発生手数料の徴収法」 の話に移ろう。これは極めて重要な問題だ。海外送金を申し込むと、銀行側は必ず質問する。「仕向け人払い」 か 「受け取り人払い」 かと。要するに海外で発生した手数料を誰が負担するかという話だ。

 例えば語学学校から手付金300ユーロを振り込むよう指示があったとしよう。銀行に行って海外送金手続きをする。銀行員は訊ねるだろう。「受け取り人払い、それとも仕向け人払い?」 と。ここで受け取り人払いを選んで300ユーロを送金すると、語学学校に届くのは250〜290ユーロほどである。当然にも相手の要求額を満たすことができずトラブルの原因となる。実はこの問題は本当に頻繁に起こっていて、「日本人からの送金はいつも不足する!」 と語学学校側はどこも嘆いている。

 それは何故かどこの銀行員も決まって 「受け取り人払い」 を勧めるからだ。海外送金について詳しくない我々は、わけも分からぬままに行員の指示に従ってしまうためにこの問題が起こる。実は分かっていないのは我々だけでなく、行員もよく分かっていないのだ。

 不足分をあとでまた振込人に請求するのが面倒な銀行は、結果として受け取り人払いを勧めてしまう。我々はきちんと理解して覚えておこう。自分の海外口座に振り込む場合は 「受け取り人払い」、相手に指定された金額を振り込む場合には 「仕向け人払い」 を選ぶということを。受け取り人払いの場合は、料金を送った金額の中から差っ引かれる。ここまでは理解できたと思う。


海外発生手数料の徴収法-2 (仕向け人払い)
 では仕向け人払いの場合に、銀行はどうやって不足分を徴収するのだろうか。大抵は送金手続き時にいくらかの金を銀行側が預かり、実際にかかった分をこの預かり金から差っ引いて、残った分を仕向け人の口座に戻す方法を取る。しかしこのやり方にも実はいろんな種類があって、

 A銀行では事前に3500円を一時預かり金として受けとって、あとであまった分を口座に戻すが、もし足りなかった場合は仕向け人に別途請求する。

 B銀行では事前に5000円を一時預かり金として受け取って、あとであまった分を口座に戻すが、もし足りなかった場合でも仕向け人に請求はせず、銀行側が自腹で補填する。

 C銀行では事前に4000円を一時預かり金として受けとって、あとであまった分を返したりはしないが、もし足りなかった場合でも仕向け人に請求はせず、銀行側が自腹で補填する。

 D銀行では事前に4500円を一時預かり金として受けとって、あとであまった分を返したりはしないが、もし足りなかった場合は仕向け人に別途請求する。

銀行 事前預り金 あまった場合の処理 不足した場合の処理
A銀行 3500円 仕向け人口座に戻す あとで仕向け人に別途請求
B銀行 5000円 仕向け人口座に戻す 銀行側が自腹で補填
C銀行 4000円 返却はしない 銀行側が自腹で補填
D銀行 4500円 返却はしない あとで仕向け人に別途請求
海外発生手数料を 「仕向け人払い」 にした場合の料金徴収方法の例。
銀行によって対処の仕方にばらつきがある

 これはパンフレットなどに載っている 「海外送金手数料」 とは別物だ。つまり仕向け人払いの場合の計算式はこうなる。例えばC銀行の場合、

送金額: 10万円
海外送金手数料: 4500円
+) 事前預かり金: 4000円 (余剰分の返却なし、追加請求ナシ)

合計: 10万8500円


 つまり送金にかかる費用は8500円ということだ。困ったことに銀行のホームページやパンフレットには大抵、一時預かり金に関する記述が明記されていない。要するにパンフレットに記載されているの 「海外送金手数料」 のみ比べても、真実は見えてこないわけだ。

結論としての 「銀行の選び方」
ちょっと一言
 海外生活しながら日本国内に預金口座を保有する場合は、銀行印も海外に持ち出すべきだ。日本の伝統からすれば印鑑は常に隠し持つべきもので、唯一無二の貴重品というイメージがある。

 しかし今日に至り、印鑑がこれだけ形骸化したものになってしまってはいかがなものか…。窓口で本人確認をするには結局印鑑だけでは足りず、身分証明書も出さねばならない。印鑑は100円均一でも買え、そんな三紋判を銀行印として堂々と利用できるのだから。

 それならここは一つ逆手に取り、銀行印は100円均一品で揃えよう。100円と言ったって各店舗に数種類置かれているのだが、大量生産品である以上同じモノも多数ある。これを買い占め、同じ印鑑を3本くらい持っていいよう。必要なときは捺印して海外から銀行に郵送すればいい。

 実際に人が窓口に足を運び、委任状を必要とするような場合に備えて、家族か信頼できる友人にもう一本を託しておけばよい。もちろん、百均で探せないような変わった苗字の方にはできない芸当だろうが…。

 以上のことをまとめて総括とする。とにかく日本国内の別銀行に最低2つ以上の口座を持つべきだ。そして一つはインターネット専業銀行であること。

 専業でないと、必ずどこかに実在する支店の窓口サービスに依存するため、トラブルがあった場合には本人がその支店に足を運ばねばならない。逆に専業銀行であれば支店がネット上にしか存在しないから、世界中どこからでもトラブルの解決が可能である (銀行印は海外にも持参しよう)。

 もう一つの銀行は実家のそばにある、つまり地元の銀行がよいだろう。もし親族が日本に以内場合には、信用できる友人宅のそばの銀行でもいい。

 つまり窓口が実在する銀行と、ネット専業銀行の二本建てである。ほとんどのネット専業銀行は海外送金用の国際銀行コードを持っていない。結果として地元の銀行から海外送金ができねばならないが、そういう銀行がうまく見つからない場合は別途、第3の銀行口座が必要だ。大手銀行がよいのだが、チェックすべき点は、

1、海外にいながらにして海外向け送金指示が出せること。

2、(我々の場合はドイツに) 豊富なコルレス先を有していること。

3、全ての保有口座で、インターネットバンキング・サービスを無料で使えること。

4、そしてインターネットバンキングを、海外のPCからでも稼動可能であることが確認できること。

もし可能なら、5、日本国内の銀行間振り込み料金が比較的安いこと。

また実在銀行の場合、可能であれば、6、委任状を託すことで本人以外の者の指示も受けつけてもらえること (可能な場合は必要な委任状の書式も確認しておくこと)。


ちなみに郵便貯金
 さて、ここまで読ませておいてから言うのもなんだが…、実は日本から海外の銀行口座に振り込むには、2006年5月現在、郵便貯金を使うのが最も安い。ではどうしてこのような長い説明を読ませたかというと、郵便貯金では海外に居ながら、電話やインターネットを使っての 「海外向け送金」 の指示が一切出せないためだ。

 渡欧を予定しているあなたが今から振り込もうというなら、恐らく郵便貯金を使うべきだ。しかし海外にいながら口座操作をしようとするなら、やはり銀行の方がサポートが優れているように思う。それは郵便貯金のホームバンキングサービス・ホームページと銀行のホームページを見比べれば、その情報量に圧倒的な差があることでも容易に感じることができるだろう。

 それに、日本の郵便貯金口座へは、海外の銀行から振り込むこともできない。これも大きなデメリットといえよう。つまり我々は銀行と郵便貯金をうまく使い分けていく必要があるのだ。郵便貯金からの海外送金に関しては別稿を参照して欲しいが、郵便貯金の場合は ユーロジャイロ というまったく異なる独自の提携システムを利用している。

ドイツ国内でのメインバンク選び
 本稿の最後に、ドイツ国内でのメインバンク選びについても言及しておこう。KOMMERZBANK、Dresdner Bank、Deutsche Bank といった銀行は、全国規模で見れば確かに支店数は多いが、特定地域内だけで考えれば地方銀行の方が支店数もATM設置台数も多い。これは日本でも同じ傾向にある。

 他銀行保有のATMを使うと必ず手数料が発生するから、生活圏内により多くのATMが集まっている方が便利なはずだ。また電気・水道を統括する Stadtwerke への支払を考えた場合、Stadtwerke は地方銀行か政府系銀行である Sparkasse グループをメインバンクとしている場合が多い。

 つまり地方銀行にも実は大きなメリットがあるのだ。しかし反対に地方銀行は旅行先において不便であり、他地域には地方銀行所有のATMなど皆無に等しい。また海外送金などの場合は、当然にもコルレス先を通さねばならないので費用はかさむ。

 お勧めは居住地域の地方銀行にメイン口座を持ちつつ、三大銀行の一つにも口座を別途用意することだ。ドイツにおける大抵の銀行口座は毎月、あるいは年単位で口座維持費用が徴収される。口座維持費用が高額になるほど使い勝手はよくなる傾向は否定できないが、可能であればメインバンクの方で多少の維持費用を支払い、サブバンクで維持費用をほとんど支払わなくて済むような設定が望ましい。(参考までに、ボクがどういう口座を運用しているかは別稿で紹介している)。

日本円をユーロへ
01、外為相場の基礎知識
02、銀行振込
03、郵便電信振替
04、郵便住所宛送金
05、CITI BANKワールドキャッシュ
06、MUFGインターナショナルカード
07、みずほインターナショナルカード
08、郵貯系PULSカード
09、クレジットカード・キャッシング
10、トラベラーズチェック (TC)
11、結論


2006.07.21 kon.T
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