日本円をユーロに

外為相場基礎知識

はじめに
 本稿は、ボク自身が自己の生活のために送金する方法を調べた内容であり、ここに紹介した金融機関等から何らかのリベートを受けるような、いわゆる 「ちょうちん記事」 ではない。各金融機関サービスの長所のみならず短所も存分に挙げることで、多くの留学生の参考としていただくべき執筆した。
 しかし金融商品と言うものは本来非常に複雑なもので、素人がやすやすと論じられるものではない。したがって本稿にはボク自身の誤解を含む可能性もあるし、また本稿によって威信を失う金融機関からの突き上げ等も予想される。
 本稿は読者や関係機関からの指摘によって随時更新・改訂される可能性があるため、読者諸氏はこのページから得た情報を鵜呑みにせず自己責任で行動していただくことを願う。ボク自身があくまで一留学生として、自分のために集めた情報であることをここに改めて明記し、他のいかなる勢力からの恩恵も受けずに本稿を執筆したことを宣言する。じっちゃんの名にかけて

外為相場の基礎を知ろう メニュー
 日本円からユーロへ両替するにはどうすればいいのだろうか。もしあなたが単なる旅行者ならば、空港の両替所や銀行に行って交換すればいいだろう。しかし海外で生活する以上、多くの日本円を外貨に交換する以上、そう簡単に考えるべきではない。

 誰でも一度は 「外国為替市場」 という言葉を聞いた事があるはずだ。両替は外為市場で取引される相場を基準に行われるが、われわれ一般留学生にとってこれは非常にわかりにくく、しかし極めて重要な問題である。海外に住む以上は多少なりとも外為 (がいため)、すなわち外国為替に関する知識を持っていなければならない。基本は TTM、TTS それに CASHS。加えて TTB、銀行毎に違うスプレッドやサービス。さらに A/S、T/C についても十分理解する必要がある。

 そもそも外為相場には大きく銀行間相場と対顧客相場の2種類がある。例えば新聞などに 「東京外国為替市場 円相場」 とあれば、これは銀行間取引相場のことだ。新聞によっては 「銀行間直物 (じかもの)」 とか 「仲値」 などと書かれていることもある。銀行間相場は市場が活動しているあいだ刻々と変動し続けているのだが、一般客が銀行窓口で外貨に両替しようとするときに、秒単位で相場が変動されては支障が出てしまう。そこで個々の銀行は毎日午前10時前後に交換レートを定め、その日一にちはこのレートを使って両替を行おうとする。これが対顧客相場である。

 もちろん市場が大幅に変動した場合は、同じ日であっても途中で対顧客相場に修正が加えられることもある。大幅と言うのは一日に一円以上の変動があった場合などを指すのだが、外為相場は株式相場と違い普通はそう極端に上下するものではないため対顧客相場を毎朝設定することが可能なのである。

 対顧客相場の基準レートを TTM (Telegraphic Transfer Middle rate) と言い、日本語では一般に中値 (なかね) と呼ぶ (つまり中値は銀行間相場と対顧客相場の双方にある)。銀行が一般客に外貨を売る場合は、TTM に銀行が独自に手数料加えた額、即ち TTS (Telegraphic Transfer Selling rate) が適応される。米ドルの場合 TTS は1ドル当たり TTM + 1.00円 が相場だが、ユーロの場合は大抵 1ユーロ当たり TTM + 1.50円 程度となる。もし新聞などに、「対顧客電信売相場」 と出ていれば、これは TTS を指している。多くの留学生が人はここで大きなミスを犯すのだが、この TTS はあくまで 「電信売」 の相場である。では電信売とは何だろうか。正確に説明しようとすれば外為法に為替決済制度まで持ち出さねばならないのだが、ここでは独ボク読者向けに、つまり留学生向けに必要最小限の説明にとどめることにする。


電信売相場とは何か
 日本にいるボクがドイツの語学学校に授業料を振り込むことを想定しよう。1ヵ月分の授業料は300ユーロ。学校側は手付金として300ユーロの一部、150ユーロをまずは送金して欲しいと要求してきた。振込先は Dresdner Bank Augsburg (ドレスデン銀行アウグスブルク支店) にある語学学校の口座。ボクは銀行か郵便局に行って振り込み手続きをしなければならない。ちなみに、振込みをするなら平均3000〜4000円の手数料を取る銀行より、2500円で済む郵便局がお得 (※2006年4月の改定にり、それまでの400円から2500円へ625%の値上げとなった) なのだが、ここでは説明がややこしくなるので銀行振込を使うことにする。150ユーロを振り込む場合、150ユーロ分の現金を銀行に持っていくより、自分の銀行口座の中から150ユーロ分の日本円を振込みに使った方が得だ。理由はあとで説明するが、取り敢えず自分の銀行口座の中から、一部を送金するように手続きをしよう。

 ボクは三菱東京UFJ銀行で150ユーロ分の海外振込みを申し込む。これを 「ユーロ建て振込指示」 と言う。銀行は TTS を元に150ユーロが日本円でいくらになるのかを計算する。今日現在のユーロ TTM を100円と想定すると、TTS は大抵 101円50銭 となるだろう。150ユ−ロということは 101.50 円 x 150 = 15,225 円。ボクの銀行口座から 15,225 円が差っ引かれてドイツに振り込まれる。

 銀行はドイツにある相手先の銀行、つまりドレスデン銀行の本店宛てに送金手続きをするのだが、別に直接現金を送りつけるわけではない。東京三菱銀行にとってみれば、ドレスデン銀行に対して 「借り」 を作ってるだけのことだ。まずボクの 15,225 円は東京三菱銀行内部で帳簿上 150 ユーロ に書きかえらる。東京三菱銀行は後でドレスデン銀行に150ユーロ支払うことを約束して、取りあえず今はドレスデン銀行に立て替えてもらって、アウグスブルク支店にある語学学校の口座の残高を150ユーロ分増やしてもらう。しかし三菱東京UFJ銀行とドレスデン銀行間の取引は別にこれ一つではない。双方から毎月何百件もの振込が行われているはずだ。一定の期間が経過すると両銀行はお互いの貸し借りを清算して差額を相手に支払うか、あるいは次回の清算に繰り越す。



 この取引の中で注目すべきは、ボクが振込指示を行ってから語学学校の口座残高が150ユーロ増えるまでの間、現金 (紙幣) は一切移動していないという点である。あくまで帳簿上、数字の増減があっただけなのだ。このように現金の移動が直接行われなず、電信による指示のみで完了する為替取引が 「電信為替」 であり、実質ボクはユーロという現金を手にすることなく、ボクの口座のお金を帳簿上でユーロに交換して送金したことになる。

 そしてボクが日本円をユーロに交換したという事実は、つまり銀行がボクに 「ユーロを売った」 ということ。これを 「電信売 (でんしんうり)」 という。とにかく大事なことは、紙幣が一切動いていないということだ。このような取引の中では TTS のレートが用いられる。


「Cash S」 とは何か
 さて次に Cash S の説明を始める。取りあえずここでまた例を挙げるとしよう。ボクは来週からドイツに住むことになっている。そこで手持ちの日本円を銀行でユーロに両替しようと思い、いま銀行に向かっている。銀行の窓口には外貨換算レートの電光掲示板が光っている。「1ユーロは日本円でいくらかなー」。TTS という欄には 101.50 円と書かれている。取りあえず 1000 ユーロを用意しておこうと思いボクは計算した。 101.50円 x 1,000 = 101,500 円。

 さてここで既にボクは間違いを犯しているのだが気付いただろうか。説明したように TTS は電信売の相場であり現金、つまり紙幣が動いてはいけないのだ。今ボクはここでユーロ紙幣を手にしようとしているため両替レートに TTS は用いられない。この場合には Cash S のレートが用いられる。

 Cash S レートの設定も銀行毎に多少の差があるのだが、ユーロの場合は大抵 TTM + 3.0円くらいである。すなわち、ユーロ TTM を100円とすると、銀行窓口で日本円をユーロの現金に交換する場合はおよそ 1ユーロ=約103円 となる。ちなみにユーロの現金を日本円の現金に交換する場合は Cash B レートが用いられるが、これTTM −3.0円。つまりTTMで1ユーロ100円とすると、97円である。このことから日本円をユーロに換金し、更にユーロを日本円に交換するとき、往復で1ユーロ当たり TTS (電信売相場)/TTB (電信買相場) レートならば 4円、Cash S/B ならば 6円の損失が見込まれる。



 ここまでが外国為替の基礎。他コーナーでは主な外貨換金サービスの概要と、海外送金に関する銀行間取引の仕組みと最終的なコスト計算について説明し、最終的には 「ドイツ留学生にとってもっとも有利な換金手段」 にまで言及していく。

日本円をユーロへ
01、外為相場の基礎知識
02、銀行振込
03、郵便電信振替
04、郵便住所宛送金
05、CITI BANKワールドキャッシュ
06、MUFGインターナショナルカード
07、みずほインターナショナルカード
08、郵貯系PULSカード
09、クレジットカード・キャッシング
10、トラベラーズチェック (TC)
11、結論


2006.06.08 kon.T
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