ドイツの語学学校へ

01、授業料だけでなくトータルコスト メニュー
 留学関連書籍や斡旋業者のパンフレットには数多くの語学学校が紹介されている。しかしかかる費用はというと千差万別。いったいどの料金が適正なのやらさっぱり分からない。例えば手元にある「成功する留学 ドイツ・スイス・オーストリア編2001-02」(ダイヤモンド社刊 2000 Tokyo) を開いてみて、各学校が設定している料金を比較してみよう(この2001-02年度版は通貨表記が一定していない。マルク表記のものはユーロに変換して掲載した。ユーロセント以下は切捨て。1ユーロ=2マルク換算。採用するデータは、週20時間以上で午前、且つ1週間〜4ヵ月プランのうち、もっとも割り安なプランを1ヵ月分の料金で換算、滞在費は学校側が斡旋する最も安い形態で換算)。

学校名 所在 授業料 滞在費 備考
Goethe Institut ベルリン 792 350
Goethe Institut ミュンヘン 792 350 下・D
Goethe Institut ドレスデン 617 250 下・D
CDC-Carl Duisberg Centren ベルリン 634 613
CDC-Carl Duisberg Centren ミュンヘン 634 531
did deutsch-institut ベルリン 772 552 HS・朝
did deutsch-institut ミュンヘン 772 552 HS・朝
Colon Language Center ハンブルク 370 501
inlingua ミュンヘン 431 644 HS・朝
Uni Leipzig interDaF ライプツィヒ 387 160 WG・*1
ADK-Augsburger Deutschkurs アウグスブルク 379 472 HS・朝夕*4
Sprachschule Kramer フライブルク 193 175 WG*2
Sprachenkolleg フライブルク 175 *3 斡旋*3
HSF ハイデルベルク 391 220
Cultura Wein ウィーン 348 220 寮*5
備考: HS(ホームステイ)、下(下宿)、D(二人部屋)、WG(共同住宅)、朝(朝食付)、夕(夕食付)
注: *1(同書には掲載されていない)
*2(虚偽。実際は月300ユーロ以上と思われる。授業内容に関しても悪名高い)
*3(住居斡旋はするが事実上の住居探しは非常に困難。ここに紹介したフライブルクの学校2校は比較的安価だが、慢性的な住宅難にあえぐ街で住宅費は高騰、最低でも月300ユーロは必要。2002年現在急ピッチで造成中。以後は状況改善の可能性あり)、
*4(表記授業料は日本人価格。第三国からの生徒は250程度。日本人でも割引交渉の結果250ユーロになった例多々あり)
*5(同書には記載されていないが、学生寮に空きがある場合の料金)

 表のように授業料は月当たり792から175ユーロとばらつきがある。居住費に関しては授業料に含まれる形でのみ記載されている学校もあるし、教材費を別途徴収する場合もある。その辺りのトータルコストに関しては十分に見極め、場合によってはe-メールで問い合わせる必要がある。

 授業料の違いだが、例えば inlingua の場合、数巻セットの教科書をもらえるのだが、これは同校が編集発行している特製品。同校に入った S.F さんによると 「教科書代が大半を占めているのではないか」 というほど資金を注ぎ込んでいるらしい。対して一般の学校は市販の教科書を使うが、どちらがいいかは判断に苦しむ。ボクは Uni Leipzig interDaF などで特製教科書を使った。これには長所も短所もあったが、4ヵ月間1サイクルという同校のシステムを考えれば、非常に効率よくまとめられていた。自校の特性に合わせて編集される教科書は、その学校にいる限り学習効果が高いと思われる。しかしいざ学校を替えようと思うと面倒なことも多い。

 例えばボクが学校を移ったとき、ボクは前の学校では中級クラス1に在籍していた。そのクラスでは問題なく他の生徒と会話できていたが、学校を移って同じレベルの生徒と話したらチンプンカンプン。つまり教科書ごとに、どの単語をどこで教えるかという順序が違うため、他の教科書を使っている生徒とは習得している単語の種類に差が出ることがあるのだ。とは言っても市販本は大概ほかの教科書も視野に入れて作っているのでその危険性は低いのだが、独自教科書を使っている学校から移動すると辛い状況に追い込まれやすい。また各種の公的なドイツ語試験も市販教科書の進度を念頭に入れて出題するため、テスト対策には独自教科書を使うより市販教科書を使ってもらう方が、生徒としてはありがたい場合が多い。これに関しても時間があればe-メールで学校に問い合わせたいものだ。

 授業内容についてだが、これは料金にあまり比例しない。ボクが初めて通った語学学校は2ヵ月で当時60万円(HS・朝夕食月・二人部屋料金込み)ほど支払った。破格な高さだが、授業の質がそれほど高かったとは思えない。逆にDSH試験前に通った学校は月250ユーロ(授業料のみ)だったにも関わらず、授業内容はとても良かった。そもそも語学教員は、外国語としてのドイツ語を教えるためのエキスパートとして大学で学んだ人々であって、彼らは就職先の学校で学校独自の教授方法を学んでいるわけではない。確かに、学校側が高い額を教員に支払って、よりいい教員を確保しているというなら高額な授業料もうなずける。しかし実際の教員らはいろいろな学校を掛け持ちしていたり、数年単位で職場を替えているケースが多いので、高い授業料を要求する学校のみが良い教員を抱えているとは言い切れない。この件に関しては多くの語学学生と話し合ったが、授業料の高さによって授業の質を判断することはできないようだ。

 しかしだからといって、高い授業料を要求する学校に意味はないのかというと一概にそうも言えない。例えば、授業料の最も高いゲーテ・インスティテュートは国家認定。ドイツ語能力認定基準は同校の基準がドイツ全土で適応されている。ドイツ国家が外国人の正規の語学教育機関として業務委託している。よって同校の生徒が持つ生徒証が、あらゆる語学学校の中で最強。公的・公共施設の割引に関しても、同学の生徒証が認められねば、あらゆる語学学校の生徒証も認められない。例えば、有名なノイ・シュヴァンシュタイン城の入場に関しても、大人・小人・学生・生徒などの料金区分があるが、語学学校の生徒が「生徒」の区分に分類されるのはゲーテ・インスティテュートの生徒のみ。それ以外の学校の生徒は正規の大人料金が適用される。ゲーテは高いが、それに付随するメリットも無視はできない。授業の質に関しても最高レベル・・・・と、一応そういうことにはなっている。しかし高すぎるが。

 一方、ミュンヘンのゲーテに在学中という大学生と知り合った時、彼はこんなことを言ってた。

 「ミュンヘンのゲーテは日本人だらけ。学校も寮も日本人ばっかりさ。え?外人? あぁ、確かに居ることは居るよ。授業に行ったら、先生はドイツ人だしね(笑) けどボクのクラスや友人のらのクラスでは、学校関係者以外ほとんど日本人。日本のドイツ語教室と大差ないんだよね、これじゃ・・・」

 いくら多くの先生が語学の博士号持ちで、高い料金を取り、授業以外のアフターケアが充実していても、クラス構成がこれでは仕方がない。生徒の国籍は学校毎にバラツキ、偏りがある。こういう問題はいくら高い料金を支払っても補うことが出来ない (もっとも、値段の高い学校には日本人が多く、安い学校にはアラブ系・中国系が多いという傾向は否めないが)。

 結局のところ学校選びに関して、支払う料金だけによって授業そのものの良し悪しを計ることはできないということだ。よって料金に関しては自分の懐(ふところ)具合との相談で決める他はない。受領料の差は、主に学校の立地条件や授業後のお楽しみ会、学校内の図書館設備やインターネット設備などのアフターケアに反映される。このときに留意する点は、高いからといって授業内容が良いとは限らず、安いらといって授業内容が悪いとも限らない、ということである。

2003.11.22
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