ドイツの語学学校へ

04、街で選ぶには(市内に競合校があるか) メニュー
 語学学校を選ぶ時に考えるべきは、何も学校の内容ばかりではない。学校の立地やどの街にあるかも重要だ。街の雰囲気・印象は生活する上で、そして学習の上で精神面に大きく作用する。例えばライプツィヒ(別項あり)という街は、到着したその瞬間からボクに陰鬱さを感じさせた。その感情は4ヵ月後に街を出る時まで変わることはなかったし、気分の重苦しさは学校の厳しさとあいまって更に一段と激しいストレスを生み出した。一方1ヵ月間のみ過ごしたチェコの首都・プラハでは、着いたその時から興奮した。何もドイツ以外の国だからというわけではない。街の風景や人々の気質、モルダウ川の流れに心惹かれたからだ。ボクはこの街のカフェやマクドナルドで、毎日をドイツ語の自主勉強に費やした。勉強に飽きたら街を散歩して気分転換し、また勉強に集中する。こういうサイクルは気に入った街であればあるほど効果が高い。
ウィーンの語学学校 Cultura Wien iki は常に競合関係。生徒は2つの学校を行き来している。故にサービス精神は共に抜群

 ライプツィヒとプラハの例を挙げたが、しかし万人がボクと同じではない。街をどう見るか、どう感じるかは千差万別。どちらの街の印象もあくまでボクが個人的に感じたに過ぎないので、プラハがライプツィヒよりいい街だと言いたいわけではない。要は、来てはみたが何故かストレスがたまって仕方なかったり、勉強に集中できないような状況であれば、街を移る理由としては十分なのだ。語学留学をしたいと考えてはみたが、何処の学校が良いのか分からない。と、そんな場合はまず自分の好きな街を選ぶべきだ。

 しかしもし「何処の学校が良いのか分からない」、その上「ドイツの街についても全く知らない」と言うのであれば、語学学校の多い街を選んでみてはどうだろうか。ボクが学んだウィーンの語学学校・Cultura Wien は、ウィーンの中では授業料の比較的安い学校に分類されるのだが、この学校とほぼ同額の料金を設定している学校が実はウィーンに結構あるのだ。なぜ料金が似通っているのか。その答えは、学校間に熾烈な競合関係が生まれているからに他ならない。

 より多くの生徒を集めようと思えば、学校としては授業料を安くするのが手っ取り早い。しかしこれには限度があるし、極限まで安くしてしまえば今度は学校経営の意義が失われてしまう。これは日本の缶ジュースみたいなもので、ジュース自体はそれぞれ異なった会社が製造しているのに、自動販売機で売る定価は、何故か申し合わせでもしたかのように一定になってしまう。つまり学校側としては競合校と同程度の料金を設定すればよいわけで、それより下げてしまうと、今度は相手校もそれに対抗して値下げしてしまう危険性がある。これは自分の首を締める結果につながるのだ。

 授業料の値引き合戦に一応の終止符が打たれると、今度は内容で勝負するしかない。とは言っても教員や授業の質を向上させるのはなかなか難しい。語学学校の先生は端っから近隣の学校で授業を掛け持ちしていたりするし、そもそも人気講師になるほど高い給与を支払わねば自校に来てくれない。だから学校は授業内容より、学校そのもののサービスを改善する他はないのだ。学校によっては授業後に参加費無料の市内散策を企画したり、ビデオを回してドイツ語映画鑑賞会を開いたり、あるいは頻繁にパーティーや飲み会を企画してみたりと、あの手この手で生徒を勧誘する。もし他の学校のサービスの方がよければ、生徒はすぐ次の月から学校を替えてしまうからだ。

 このような理由で語学学校の多い街では、比較的よいサービスを受けることができるだろう。また市内に学校が多いということは、学校を移ることも非常に簡単にできるわけである。先生も人間、生徒も人間。気心が合わないこともあるだろう。そんな時はすぐにクラス替えを申し出よう。もしクラスを替えることができないときは、迷わず他校に移ろう。またあるいは、市内にもっと評判のいい、もっと安い学校の噂を聞くこともあるだろう。そんなときも迷わず他校に移ることを考えよう。新たな学校の事務所へ行って自分で契約をまとめるのも、価値あるドイツ語の勉強なのだから。

 ところが日本人は滅多な事で学校を移ったりはしない。これは語学学校関係者によく知られた話であり、日本人にとってそれはあたりまえのことだ。なぜなら日本人は語学学校に入校を申し込むとき、最初から何か月分もの授業料を支払ってしまうから、途中で移動することができない。例えば「ドイツで5ヵ月間勉強したい」と考えれば、最初から5ヵ月分をまとめて振り込んでしまうのが日本人。5ヵ月間滞在したいのに3ヵ月分しか支払わないと、4ヵ月目には何処に住めばいいんだろうと不安になってしまうからだ。


 しかしそんな問題は実はあまり重要ではない。住むところを新たに見つけるのは大変だが、既に住んでいるところに続けて住み続けるのは簡単なのだ (サマーコースを除く)。もし学校の用意してくれた部屋が学校所有だったなら、学校を出た後はそこに住み続けることができないだろう。だが一般アパートを紹介されたり、学校所有でない民間寮やホストファミリーを与えられた場合は、大抵は継続契約が可能である。また、他の学校に移るときは入校の3週間くらい前までに事務所をたずね、部屋探しも同時に依頼しておけば問題はすべて解決する。部屋が見つかった時点で次の学校に移ってもいいではないか。

 また入校から3ヵ月も経てば、パウゼ(-e Pause) を取っても文句は言われないだろう。パウゼ、つまり休息・休暇であり、授業料を支払わずブラブラすることを言う。ところがパウゼも取らず、ストレスを溜めながら悶々と勉強しつづけるのが日本人の特徴。日本人がパウゼを申し出ない理由の一つには 「学校が紹介した部屋に住みながら授業料を支払わないのは反則ではないか」 などと考えてしまうところにもある。しかし考えても見よ。日本人が 「働きアリ」 なのは世界的に有名だ。なぜそう言われるのかといえば、日本人が休憩もせずに働きつづけるからだ。勤勉・厳格と言われるドイツ人でさえ、何だかんだ理由をつけては休暇を取るのだから、休まない日本人は当然 「働きアリ」 のように見えるのだ。

 事実、日本人以外の多くの生徒が数ヵ月毎にパウゼを取っている。10ヵ月間ドイツで暮らしたいなら、何も10ヵ月間も学校に通う必要はない。時には学校から離れ、一人で静かに自習する時間も必要なのだ。パウゼを取ると称して学校を休み、その間、他の学校に住む部屋を探させるのも一つの手。しかし、もし最初から何ヵ月分もの授業料を前払いしてしまえば、もはや移動することはおろかパウゼを取ることさえ不可能だ。日本から授業料を振り込むときは、何ヵ月分振り込むべきかよく考えよう。このとき、学校には必ず次のように言っておこう。例えば・・・、

 「3ヵ月間勉強したいので、3カ月分を前払いします。しかし事情が許せば、実は1年間勉強したいと考えています。現状では返事をすることができないので3ヵ月分のみ送金しますが、3ヵ月後に受講期間を延長しようと思った場合、追加申し込みは可能でしょうか」。

 Ich möchte 3 Monaten lang bei Ihnen Deutsch lernen. Ich überweise Ihnen das Kursgebühr für 3 Monate im voraus. Ich habe geplant, dass ich bei Ihnen eigentlich 1 Jahr lerne. Aber ich kann nicht heute das versprechen, weil ich jetzt ein kleines Problem in Japan habe. Aus diesem Grund möchte ich fragen, ob ich nach 3 Monaten neuen Vertrag schließen kann, um bei Ihnen weiter zu lernen.

(直訳)私はあなたの下で3ヵ月間ドイツ語を学びたいです。私は3カ月分の授業料を振り込みます。実を言うと、そちらで1年間学びたいと考えていますが、私はいまそれを約束することができません。何故なら私はいま日本にちょっとした問題を抱えているからです。そこで質問したいのですが、3ヵ月後にもう一度契約を結ぶことはできますか? あなたの下で引き続き勉強するために。

 また、パンフレットには「申し込みは1ヵ月単位」などと書かれていても、実際には週単位での申し込みも可能なはずだ。言い方なんていくらでもある。例えばこう言えばいい。

 「実は日本大使館に行かなければならないので、2週間ほどベルリンに滞在しなければなりません。2週間後にはまた戻ってくるので学校に通いたいと思うのですが、しかし授業は1ヵ月単位でしか申し込めないのでしょうか。あるいは来月は1ヵ月間休むべきでしょうか」。

 Ich besuche zur japanischen Botchaft. Also muss ich über 2 Wochen in Berlin bleiben. Nachdem ich hier zurückkomme, möchte ich bei Ihnen weiter lernen. Aber muss man immer nur ganzen Monat anmelden, oder ist es möglich, dass man den Unterricht nur für 2 Wochen anmelden kann? Soll ich im nächsten ganzen Monat Pause machen?

(直訳)私は日本大使館を訪れます。だから私は2週間ベルリンに滞在しなければなりません。ベルリンから帰った後は引き続きあなたの下で学びたいです。しかし人はいつも、1か月分の申し込みのみ可能ですか? あるいは2週間分のみ申し込むこともできますか? 私は来月、丸一月間休むべきでしょうか?

 こう聞いたら相手は必ずOKを出す。何しろ相手は商売。たった2週間だけでも金を払ってくれるなら、それに越したことはないのだから。

 さて途中で学校を移るには、近隣に他の選択肢がなければならない。もちろん他都市・他州の学校に移ることは可能だが、引越し費用はバカにならない (と言うボクは、いつも他州の学校に転校しているが)。「いま日本に居てドイツへの語学留学を考えてはいるが、いったい何処の学校に入ればいいのか分からない」。そんなときはまず、多くの語学学校がある都市を選ぼう(注:別稿「斡旋する住居形態と家賃・ホームステイ」を参照)

 語学学校が多く立つ都市を探すには、インターネットで検索するのが一番。確かにダイヤモンド社の 「成功する留学」 ほか、留学情報書籍を見るのも一つの手だが、これらはすべての語学学校を網羅しているわけではない。大抵はその市内にある語学学校のうち、掲載料を支払ってくれる学校しか掲載していない。しかし実際は、ドイツ中に星の数ほどの語学学校が存在する。それを探すには、やはりホームページで検索するのが一番だ。例えばYahoo! Deutschland で、


 Sprachschule Deutsch sprachkurs Intensiv Mittelstufe Berlin


  などの検索キーワードを使って探してみよう(上記の例はベルリン周辺学校を探す場合)。きっと多くの学校がヒットするはずだ。
Japanologie 設置大学(2000年現在)
FU
HU
U
U
U/GU
Berlin
Berlin
Bochum
Bonn
Duisburg
U
U
U
U
U
Düsseldorf
Erlangen-Nürnberg
Frankfurt am Mein
Göttingen
Halle-Wittenberg
U
U
U
U
U
Hamburg
Heidelberg
Köln
Leipzig
Marburg
U
U
U

München
Trier
Tübingen

FU(Freie Universität)
HU(Humboldt-Universität)
U/GU(Universität-Gesamthochschule)
U(Universität)

 では小さな街の学校に通うのは失敗かというとそうではない。ホームステイをしたいなら小さな街に限る。大きな街ではホストファミリー獲得のため、語学学校同士が競っているので必然的にステイ料金が高騰する。また高騰すると、それを重要な収入源にしようとする家族も増えるので、語学生にとって質の悪いステイ先も増える結果となる。これに関しては別項1別項2を参照してほしい。

 その他のメリットとしては、小都市の方が市内交通の定期券が比較的安い。家賃も安い。食費も安く済む可能性が高い(商店間競争が少なくて割高な場合もあるが)。それに当たり前のことだが、大都市より静かで犯罪に遭う可能性も少ない。大都市より街の人々の対応が穏やかな場合が多い (一概には言えないが)。と、いった事が挙げられるだろうか。

Japanologe は日本人タンデムパートナーを探している。利害が一致すれば会話練習だけでなく、語学生にとっては貴重なドイツ人の友人を得ることができる

 次に、街の大きさではなくその街の大学にヤパノロギー(Japanologie:日本学科)があるか否かというのも、語学学校を選ぶ重要なポイントとなりえる。これは特に中級以上のドイツ語学習者にとって重要なことだが、Japanologie がある街ではタンデムパートナーを容易に探すことが可能だ。タンデムパートナー別稿あり)とは何か。例えばドイツ語を学ぶ日本人と、日本語を学ぶドイツ人がペアとなって話し、互いの語学力を高めようというもの。これがタンデムだ。

 ドイツ語に多少耳が慣れたなら、大学の Japanologie ゼミナールを探して行ってみよう。そこの掲示板にはタンデムパートナー募集の貼り紙がいくつもあるはずだ。この広告の中から手ごろな日本学科の学生 (Japanologeという) を探すか、あるいは自分で貼り紙を出して募集するのもいい。互いが互いの言語を勉強しているというのは、こちらの言語を全く解さないホストファミリーと話すより、恐らく学習効果が高い。2000年現在、ドイツ国内で日本学科を置いている大学は表の通り。

 タンデムパートナーができれば、街についても教えてもらえることも多いだろう。何が何処の店で安いかとか、あるいは何かトラブルに巻き込まれたときにも、きっと力強い頼りになってくれるはずだ。

2004.01.03
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